演題

乳癌腋窩治療における放射線療法の役割と現状 ~放射線腫瘍医の立場から~

[演者] 山内 智香子:1
1:滋賀県立成人病センター

放射線療法における標準治療は外科療法や全身療法の変遷とともに変化している。特に近年では腋窩手術の大きな変化に伴いリンパ節領域への放射線照射の考えが大きく変わってきている。センチネルリンパ節生検の普及とそれによる腋窩郭清省略がその最も大きな要因である。従来、センチネルリンパ節(SLN)転移陽性例においては腋窩郭清が行われていたが、SLN転移陽性例における非SLN転移陽性例は約半数に過ぎず、腋窩リンパ節郭清が必要かどうかについては議論の対象となっている。特にACOSOG Z0011の結果が発表されて以来、腋窩リンパ節郭清省略の可能性について注目が集まっている。その場合の腋窩リンパ節郭清省略は基本的に術後放射線療法を施行することが前提となっているが、その一方で、所属リンパ節への放射線照射を行うか否か、どのように行うべきかなどについてはまだ十分なエビデンスはない。ACOSOG Z0011では、温存乳房に対して接線照射が行われているが、照射野の上縁などについての規定はなく、照射野上縁を拡大したいわゆる’high axillary tangents’や、腋窩への線量増加をねらった‘posterior axillary boost’、さらには鎖骨上リンパ節領域まで照射された症例があったと報告されている。また、いくつかの報告によると、通常の乳房接線照射ではレベルIやレベルIIへ十分な照射線量を確保することが困難であり、さらにhigh axillary tangentsを使用した場合でも十分でないことが示されている。SLN転移がmicrometastasisかmacrometastasisかの考慮も必要である。micrometastasisの場合、適切な全身療法が行われるのであれば腋窩や所属リンパ節領域への特別な配慮は不要と思われるが、一方、macrometastasisの場合では、適切な全身療法が施行される事が前提であっても腋窩や所属リンパ節領域への照射を考慮すべきと考えられる。その際に、腋窩のみに照射を行うのか、所属リンパ節領域への照射も行うのか、鎖骨上窩リンパ節領域に加えて胸骨傍リンパ節も含めるのかなど多くの議論すべき問題がある。さらには、術前化学療法施行例に対するセンチネルリンパ節生検や腋窩郭清省略の妥当性、その場合の放射線療法をいかに行うかなど解決すべき問題が数多く残されている。わが国での腋窩手術に応じたリンパ節領域照射の方法と現状を紹介し、方針決定に際して重要と思われる文献をレビューしながら私見も含めて検討する。
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