演題

乳癌腋窩治療に対する全身治療の役割

[演者] 原 文堅:1
1:国立病院四国がんセンター乳腺科

センチネルリンパ節(SLN)転移陽性であっても,条件(cT1/2N0, SLN2個まで,乳房温存後放射線治療,全身治療を行う)を満たせば,腋窩郭清(ALND)の省略が可能であることがACOSOG Z0011試験で示され,2014年に改定されたSLN生検に関するASCOガイドラインでもこれを推奨している.ACOSOG Z0011試験は登録症例数不足,放射線治療のQuality controlが十分でなかったことなどいくつかの問題を含むため批判があるが,本試験でのKey findingsの一つに,SLN外に約30%のリンパ節転移を認めていたにもかかわらず,ALNDを省略しても腋窩再発率は1%未満と極めて良好であったことがあげられる.術後全身治療を行なわなかったNSABP B-04試験ではALND省略により局所再発率が20%に認められた時代と比較すると格段に向上しており,全身治療効果の向上が大きく貢献していると考えられる.本発表では,全身治療の局所再発制御に関するエビデンスを提示し考察を加えたい.薬物治療の進歩は目覚ましく,初期治療においては乳癌微小転移の制御,生存期間の延長に大きく貢献してきた.薬物治療は全身治療であるが,局所再発の抑制にも寄与してきたことは明らかである.Bouganimらは文献検索により53の術後補助療法ランダム化比較試験 (n=86,598)を評価した結果,全身薬物治療により15~30%の局所再発を抑制することを示した.またEBCTCGメタ解析の結果からタモキシフェンは53%,化学療法は30-47%の局所再発抑制が示されている. HER2陽性タイプでは,トラスツズマブの補助療法導入以降,局所再発率は有意に減少している.全身治療の局所に対する直接効果は,術前化学療法により明らかで,腋窩リンパ節を含めたpCR率はCTNeoBCプール解析の結果から13%に達し,特にトリプルネガティブ,HER2タイプ乳癌ではさらに高いpCR率が得られている.術前化学療法後にSLN生検の安全性を評価したACOSOG Z1071試験では治療前腋窩リンパ節転移陽性症例の腋窩pCR率は40%に達することが報告された.以上のように全身治療の進歩は局所治療に貢献し,局所コントロールを可能とし,Pungliaらが示した理論の如く,「極めて優れた全身治療は局所コントロールの役割を小さくする」ことが実証されつつある.海外ではさらに,cT1かつ腋窩超音波検査でcN0と診断された症例にSLN生検を行うか,SLN生検も行なわず経過観察のみかのランダム化比較試験 SOUND試験が行なわれており結果が待たれる.
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