演題

生体蛍光顕微鏡により肝虚血再灌流障害メカニズムはどこまで明らかとなったか

[演者] 近藤 匡:1
[著者] 田村 孝史:1, 小川 光一:1, 松村 英樹:1, 大河内 信弘:1
1:筑波大学消化器外科

肝虚血再灌流障害は、血流再開後の類洞内再酸素化に起因する白血球膠着、微小血栓、ならびにそれらによって引き起こされる類洞血流低下に特徴づけられる肝微小循環障害がその成因となることが知られている。肝微小循環の研究では、かつては固定標本を用いた組織学検討や、臓器全体を対象とした血流測定がほとんどであり、個々の血球や類洞血流に着目した研究は困難とされていた。われわれは生体蛍光顕微鏡を用いた肝微小循環観察システムを構築することにより、生理的な循環動態を保持したまま血球動態や血流分布を定量的に測定することにより再灌流障害のメカニズムならびに予防法について報告してきた。蛍光染色した白血球を観察すると、血流再開後の類洞内で転がり(Rolling)、内皮と膠着(Stagnation)して類洞血流を阻害することが判明した。この白血球と類洞内皮との相互作用がサイトカイン分泌を促進し、内皮接着分子を発現させて、その後の白血球浸潤や肝細胞アポトーシスを引き起こすことが明らかとなった。さらに蛍光技術の進歩により血小板やクッパー細胞をそれぞれ標識できるようになると、血流再開数分後から血小板は白血球膠着に先行して類洞内皮と膠着し門脈領域近傍(peri-portal)のクッパー細胞と結合して類洞血流を低下させることが判明した。クッパー細胞を除去した個体では膠着血小板数が大幅に減少して再灌流障害も軽減することから、血小板とクッパー細胞の相互作用が、一連の類洞内微小循環障害の端緒となっていることが考えられた。さらに近年増加してきている脂肪肝に着目し、軽度ならびに中等度の脂肪肝モデルを作成して脂肪沈着量の違いによる肝虚血再灌流障害の変化を検討した。脂肪肝では類洞の狭小化、蛇行による類洞灌流低下に加えて、脂肪化が進行するとクッパー細胞の発現が顕著となるため脂肪量に応じて再灌流障害も増大することが予想されたが、軽度の脂肪肝では再灌流障害が軽減するという興味深い結果が得られた。生体蛍光顕微鏡を用いて類洞内動態を把握することにより、どこまで虚血再灌流障害のメカニズムに迫ることができるのか、これまで得られた画像ととそれに関連する生化学的、組織学的データと併せて供覧し討議したい。
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