演題

SY-10-5

JETECに基づく重症腹部外傷におけるDamage control surgery~どのようにすれば重症外傷を救命できるのか?~

[演者] 渡部 広明:1
1:りんくう総合医療センター 大阪府泉州救命救急センター Acute Care Surgeryセンター

重症腹部外傷における手術は減少の傾向ではあるが、依然手術でなければ救命できない症例は存在し、これを確実に救命できる能力が外科医には求められる。2014年6月、外傷専門診療ガイドライン(Japan Expert Trauma Evaluation and Care: JETEC)が日本外傷学会により発表となった。本ガイドラインでは手術を含めた高度な治療における指針が示されており、患者救命のための治療戦略としてダメージコントロール戦略(Damage control strategy)が明記されている。今回、JETECに基づく重症腹部外傷におけるDamage control surgeryの手技についてビデオを供覧する。外傷外科手術では、その戦略(strategy)、戦術(tactics)、チームワーク(teamwork)の3つが重要な要素であり、これを迅速かつ的確(speed & suitability)に実施することが求められる(外傷外科の4要素)。バイタルが保てない症例では、救命のために初療室(救急室)での開腹も考慮しなければならない。開腹直後の最優先事項は用手圧迫による一時的止血であり、これに引き続きダメージコントロールの適応を判断する。ダメージコントロール戦略は外傷死の三徴を満たす前に決断しなければならない。重症肝損傷(III型損傷)に対する戦術の代表例はperihepatic packingであり、用手圧迫で止血された状態をガーゼで再現する。ガーゼを詰め込むのがpackingではないことを理解する必要がある。重症膵損傷(IIIb型)は主膵管損傷を伴う重篤な外傷の一つであり、特に膵頭部周辺の血管系の出血を伴うことも少なくないため、肝損傷同様に一時止血を行うことが最優先事項である。結紮可能な活動性出血はすべて結紮止血を行うが、凝固障害に起因する出血は膵頭部パッキングを行って止血を行う。膵体尾部損傷に対するダメージコントロールは体尾部切除である。膵頭部が温存不能な場合は、初回手術での膵頭十二指腸切除術(PD)は避け、planned reoperationでの実施を考慮する。planned reoperationであってもバイタルがPDに耐えられない場合は、切除と再建を分けて二期的にPDを行う。ダメージコントロール戦略による救命率は、重症肝損傷で80.8%(n=26)、膵損傷例では91.7%(n=12)と良好な予後を得ている。重症腹部外傷におけるダメージコントロール戦略は、初回手術と術後集中治療、さらにはそれに引き続くplanned reoperationを迅速かつ的確に行うことにより、良好な予後を可能とする治療戦略である。
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