演題

SY-10-3

重症胸部外傷に対するclamshell thoracotomy —So fast, so wide—

[演者] 松本 尚:1
1:日本医科大学救急医学

出血性ショックを伴う重症体幹部外傷では、「胸腔内臓器損傷の止血」もしくは「出血制御および冠・脳血流確保のための大動脈遮断」を目的に、蘇生的緊急開胸(Resuscitative thoracotomy: RT)が行われることがある。重症胸部外傷では時として上記2つを同時に目的とした状況に遭遇し、損傷部位によっては両側開胸が必要となる。胸部外科領域においては両側胸腔内へのアプローチには胸骨縦切開が一般的であるが、心停止の切迫や損傷部位が不明な状況下では胸骨横断両側開胸術(clamshell thoracotomy: CT)が有効である。RTの施行を心停止後に決断することは不毛であると言ってよく、CTの決断も同様である。CTでは他のどの開胸方法よりも広範な胸腔内へのアプローチが可能であると報告されており、その決断までの状況は止血術を必要とする右胸腔内損傷の有無や心損傷の部位によって3つのパターンに分類できる。手術手技は胸骨を横断すること以外には比較的単純であり特別に困難な部分は無い。胸骨横断には海外では“jigsaw”を用いている所もあるが、いわゆる“花切り鋏”を用いるのが手軽で良い。胸部外傷に対してCTを施行し始めた2007年1月から2014年9月の間に自施設で行った体幹部外傷手術連続418例のうち、来院時にバイタルサインが残っている状態(revised trauma score:RTS≠0と定義)でRTが行われていたのは63例であった。このうち胸部外傷に対してRTを施行した22例中、CTを行った13例を対象に治療成績を評価した。止血もしくは損傷部修復の対象となった損傷は、心8例、上大静脈1例、気管支2例、肺1例、胸壁1例で、平均年齢は49歳(3-83)、来院時のRTSの平均は4.45(2.34-7.84)、ISS(injury severity score)の平均は39.3(26-54)であった。13例中7例が生存退院しており、予測生存率(probability of survival: Ps)の平均0.382を上回る成績であった。RT自体がそうであるように、CTもまた患者への侵襲が極めて大きく通常では施行が躊躇される手技である。しかしながら、止血が完了するまでの時間をできる限り短縮すること、止血操作を広い視野で確実に行い得ることを考えればその有効性はもっと評価されて良く、CTは重症胸部外傷に対するultimate technique and tacticsと位置づけられる。
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