演題

日本外科学会とプロフェッショナルオートノミー

[演者] 國土 典宏:1
1:東京大学肝胆膵・人工臓器移植外科

 外科医を取り巻く重要な課題について理事長として3年間取り組んできた。特に専門医制度、医療安全、National Clinical Database (NCD)など本学会にとって最重要の課題を推進するためには今こそプロフェッショナルオートノミーを発揮すべき時であると痛感している。プロフェッショナルオートノミーとはマドリッド宣言にもあるように医師の職業規範の根底にあるもので、診療における自由と自己規律の義務を併せ持つ行動原則である。高度の専門性と倫理性に裏打ちされた専門家集団にのみ与えられた自律的な行動をする権利・自由であると理解している。
 専門医制度については2014年5月、第三者機関である日本専門医機構がついに設立された。当初、第三者機関に当事者である学会が社員として参画するべきではないという慎重意見を尊重して基盤学会の理事長が基盤領域代表として社員となる形でスタートした。しかし、実務上の不都合がすぐ明らかになったため、交渉の結果、基盤18学会が社員として入社することが決定した。日本外科学会は外科領域諸学会を代表する形で社員となった。プロフェッショナルオートノミーを発揮し、国民の理解を得ることが求められる。新たな専門医制度を2017年度から開始するために、実務作業はすでにかなり進んでいる。詳細については本学術集会期間中に特別セッションとして北川雄光副理事長から説明いただく予定である。
 医療安全については医療事故の原因究明や再発防止に取り組む第三者機関に関する法律が2014年に成立し、「医療事故調査・支援センター」がまもなく厚労大臣によって指定される。日本外科学会はいわゆるモデル事業を行ってきた日本医療安全調査機構が同センターとして指定されるよう全面的に協力しており、新たな枠組みの医療事故調査制度の確立に努めたい。外科医が安心して医療の行える医療安全制度になるものと期待される。
 NCDには年間120万件を超える我が国の外科手術の膨大なデータが順調に集積され、専門医申請に活用されている。また、世界に例を見ないこのビッグデータを活用して手術リスク評価(リスクカリキュレーター)や、医療水準の評価(フィードバック機能)サービスなどのリリースが始まった。今後の安定的な財政基盤を確立するためにNCD参加施設に施設会費納入の依頼が始まった。また、腹腔鏡手術後の重篤な合併症事例に関する一連の報道を受けてNCDに登録された7術式(総数約33万7千例)について腹腔鏡手術と通常手術の手術死亡率の比較を緊急で行い、全国平均値としては腹腔鏡手術の死亡率が高いという事実がないことを公表した。
 外科医の労働環境については本学会員を対象としたアンケート調査を繰り返し実施し、診療報酬改定による外科収益増を外科医に還元できるような働きかけを行ってきた。特に、当直明け手術参加の実態が明らかとなり、予定手術前当直免除を実施している施設への休日・時間外・深夜加算の大幅増額が実現したことは大きな一歩である。しかし、加算を取るための要件があまりに厳しいという意見もあるため、さらに実情を調査中である。
 定款にあるように、本学会の目的は外科学の発展と外科医療の向上に資することで国民の健康と福祉に寄与することである。この責任を果たすことでプロフェッショナルオートノミーを発揮した本学会の活動が国民に理解され、これから外科医を目指す若い医師たちを勇気付けることができると考えている。
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