演題

食道癌根治手術の定型化−胸腔鏡下手術から学んだこと—

[演者] 上野 正紀:1
[著者] 宇田川 晴司:1, 篠原 尚:1, 春田 周宇介:1, 李 世翼:1, 水野 文:1, 大倉 遊:1, 的場 周一郎:1, 松田 正道:1, 黒柳 洋弥:1, 橋本 雅司:1, 渡辺 五朗:1
1:虎の門病院消化器外科

食道癌に対して右開胸食道切除+3領域リンパ節郭清を標準術式としてきた。2006年に胸腔鏡下手術を開始し、2014年までに260例の右胸腔アプローチによる胸腔鏡手術を行った。根治的胸腔鏡下食道切除術の導入は根治的開胸食道癌根治術と同等の手術、つまり郭清と機能温存を実現させる過程であった。開胸食道切除術は定型化されていたので、胸腔鏡手術になったからといって新たな定型化を意識したことはない。新たな点といえるのは、胸腔鏡下手術の導入により拡大近接視野効果による層構造、膜構造の同定がより容易になり、郭清手技がより精緻となったことがあげられる。振り返って考えると、開胸手術においてやむを得ない、あいまいに終わらざるを得ない、とされていたところが変化してきた。①開胸手術において根治性のため下縦隔での#112郭清に伴う左縦隔胸膜の合併切除はやむを得ないと考えていたが、胸腔鏡下においては必ずしもそうしなくとも同等の根治性のある手術ができるようになった。②#106recLの郭清範囲は同等であるが、胸管および周囲脂肪織を含む上縦隔の左側縦隔胸膜内側の結合組織膜の処理がより意識的となり足側つまり大動脈弓上縁側の構造とのつながり、郭清境界の自覚が明確になった。③中縦隔左側から大動脈弓内側の強固な結合織膜の処理が拡大視野のもとになされ、その中での左気管支動脈の同定温存がおのずと定型化されたこと。以上3点の定型化を含めこれらの変化は、ひるがえって開胸術においても、新たな定型化の目標となったと考えている。胸腔鏡手術の成績は右気管支動脈の温存率は60%であった。再発は44例に見られた。初再発部位は血行性25例、播種5例、局所3例、リンパ節再発は17例であった。リンパ節転移のうちうち13例は郭清範囲内からの再発であった。3年生存率86.9%、5年生存率79.7%であった。ステージごとの3年生存率はI/ II/ III/ IV = 100/ 94.3/ 79.5/ 61.1 %であった。定型化されていた開胸手術と同等な手術を目指した胸腔鏡下手術により、食道癌根治手術は新たな定型化がなされつつあると考える。
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