演題

開腹だからできる安全な進行胃癌手術

[演者] 片井 均:1
1:国立がん研究センター中央病院胃外科

進行胃癌には少なくともD2手術が必要である。さらに、他臓器合併切除が必要となることもあり、術前補助化学療法後に手術を行うこともある。郭清を伴う開腹胃切除は、難しい手術であるが、エキスパートが長年試行錯誤の末、磨かれた技術により「標準化」というハードルはすでに越えていると考えられる。しかしながら、常にビデオ撮影されている腹腔鏡手術と異なり習熟した術者のビデオを見る機会は必ずしも多くない。難しい手術もひとつひとつの要件をこなすことができれば、その手技の習得は決して困難ではない。教育病院である当院の手術の基本概念は「患者の安全第一」である。 開腹手術の腹腔鏡手術に対する利点は、「広範囲な作業空間」の確保につきる。これにより、1)確実な視触診、2)3次元的多方向からの視野確保、器具のアプローチ、3)術者・助手の四肢すべての関節を利用しての道具操作が可能となる。 手術手技を3つの部分(胃切除、郭清、再建)に分け開腹だからできる安全な癌手術のポイントを述べていく。胃切除においては1)漿膜浸潤胃癌に対するnon-touch isolation、2)大型胃癌(特に幽門・噴門近傍)を有する胃の確実な挙上、3)他臓器浸潤癌に対する多方面からの剥離、4)適切な切離線の決定である。郭清においては1)周囲脂肪組織に浸潤があるリンパ節を損傷せずに血管から剥離、2)化学療法により結合組織が変性し、層が破壊されたリンパ節の切離、3)脱転操作により臓器の位置の移動が可能となり脾門部、大動脈リンパ節などへのアプローチが容易、4)デバイスの角度を適切に保つことによる膵熱傷の回避である。これらのポイントを確実に行うことは、手術の合併症の面からの「安全確保」のみならず「がん細胞」の散布の予防になり、腫瘍学的な面からの「安全確保」となる。再建においては、1)良好な視野における再建、2)不必要な食道剥離の回避、3)吻合器の適正な軸の確保である。 噴門・幽門近傍の大型胃癌、他臓器浸潤胃癌、塊状の膵上縁リンパ節転移胃癌、大動脈リンパ節転移胃癌、術前補助化学療法後などの手術から「開腹だからできる安全な進行胃癌手術」のコツとピットフォールを紹介する。
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