【背景】外傷手術トレーニングに十分な手術数の施設は少なく、施設間での治療成績の検討も少ない。【目的】重症腹部外傷の手術数の多寡と施設の死亡率の関係を検討した。【対象】日本外傷データバンクの2004年から2012年までの123462例より重症腹部外傷に対して開腹手術が行われた2597例(133施設)を対象とした。【方法】手術数の多寡と死亡率の関係を施設間で比較した。TRISS法によるPs: Probability of survivalを用いて重症度ごとの比較も行った。【結果】1施設あたりの手術数は1から192例(中央値12例)であった。手術数の少数群70施設と多数群63施設の比較では、死亡率は22.1%と28.7%で、手術数の多い施設で死亡率が高かった。重症度ごとに比較しても同様の傾向であった。【考察】重症外傷の救命のためには、手術手技だけでなくダメージコントロール戦略など集学的治療の施設の総合力が必要と考える。