演題詳細

教育講演 / Educational Lecture

教育講演55 (Educational Lecture 55) : プログレス

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日程
2013年10月12日(土)
時間
08:45 - 09:15
会場
第14会場 / Room No.14 (札幌市教育文化会館 3F 研修室305)
座長・司会
小田 慈 (Megumi Oda):1
1:岡山大学病院 小児血液・腫瘍科
 
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分類不能型免疫不全症(CVID)の多彩な病像と分子基盤

演題番号 : EL-55

森尾 友宏 (Tomohiro Morio):1

1:東京医科歯科大学大学院医師学総合研究科 発生発達病態学分野

 

はじめに

 分類不能型免疫不全症:Common variable immunodeficiency (以下CVID)は,症例数が多く(common),多彩な臨床症状・病像をとり(variable),低γグロブリン血症を示す原発性免疫不全症のうち原因が特定されていない疾患群を指している1~3)
 現時点では「除外診断として定義される疾患」であり,原因が不明(分類不能)であるために,国内では暫定的に「分類不能型免疫不全症」という名称がつけられ,そのまま用いられている。IUIS (International Union of Immunological Societies) Expert Committee for Primary Immunodeficiency大分類では「抗体産生不全を主体とする疾患群」に振り分けられている4)
 疫学的には発症率は10,000人から100,000人に1人とされている。2009年に実施した全国調査では200件程度の患者情報が集積したが,その後も症例は増加している。潜在的な患者も含めれば最低1,000人,おそらく数千人以上であろうと推測される。患者数が増加している要因の1つとして,小児領域から成人領域に展開したawareness campaignによるところが大きいと考えられている。表1には原発性免疫不全症(Primary Immunodeficiency: PID)の診断の遅れを防ぐために,欧州免疫不全症学会(European Society for lmmunodeficiencies: ESID)やJeffery Modell Foundation (JFM)などが中心となって作成した成人PIDのwarning signsをあげている。成人領域においても,感染症の頻度が高い,感染症が重症化あるいは遷延化した,稀な感染症を起こした,などというエピソードをもつ患者ではCVIDを念頭において診断を進める必要がある。一方いわゆる自己炎症性疾患や,自己免疫性溶血性貧血や特発性血小板減少性紫斑病などをはじめとする自己免疫疾患を主体とするCVIDも散見される。CVIDには悪性腫瘍の合併も多く,病態的には発症の順序も興味深いが,今後比較的若年で悪性腫瘍を発症した患者ではベースとしてCVIDを始めとする原発性免疫不全症を分子基盤として考慮すべき時代になる可能性がある。
 ここではCVIDの定義,多彩な症状,既知の分子基盤について概説し,最後にこのように多種の分子異常(先天的及び後成的)が想定される疾患における分子異常解明のアプローチについて紹介したい。

1.CVIDの原発性免疫不全症における分類

 公にされている最新のIUIS Expert Committee for Primary Immunodeficiencyでは,免疫不全症を8つのカテゴリーに分類している4)。IUISは執筆時点では再改訂中であり,最新情報はFrontiers in Immunologyなどへの掲載を参照されたい。現時点ではCVIDは「抗体産生不全を主体とする免疫不全症」に属しているが,その中には以下の6つの亜群があげられている。便宜的に以下のように番号を振っておく。
2-1.無γグロブリン血症(すべてのIgが著減)+B細胞は欠損あるいは著減:BTK欠損症など
2-2.2種類以上のIgが著減+B細胞数は減少ないし正常:広義のCVID
2-3.IgG,IgAが著減+IgMは正常ないし増加+B細胞数は正常:いわゆる高IgM症候群
2-4.アイソタイプ欠損症あるいはκ鎖欠損症+B細胞数は正常:IgA欠損症など
2-5.特異抗体産生不全(Ig値は正常)+B細胞数は正常
2-6.乳児一過性低γグロブリン血症+B細胞数は正常
 CVIDはこの中の2-2に属する疾患群である。2-2に分類するためには2-1,-3,-4,-5,-6の既知の疾患,及びその他のカテゴリーに属する疾患群(例えばB細胞及びT細胞共におかされる複合型免疫不全症)を除外する必要がある(今一度定義の部分で述べる)。
 混乱を招く書き方になるが,2-2に分類された疾患は基本的には広義のCVIDである。言い換えれば,責任遺伝子が特定されると「遺伝子X欠損症」などという形で,2.2の中で「(狭義の)CVID以外「として分離していくことになる(責任遺伝子の判明したCVIDは「狭義のCVID」から外れることになる)。厳密な意味でのCVIDはこのままではいつまでも「整理されていない疾患群」となり居心地が悪い。さらに,2-4に属するIgA欠損症はCVIDに移行する(あるいはCVIDからIgA欠損症に移行する)場合があり,2.2の狭義のCVIDも独立した概念とは言えない。いずれにせよこの稿ではCVIDを「2-2.2種類以上のIgが著減+B細胞数は減少ないし正常」に属する疾患群として議論していく。この先重要なことは病態あるいは責任遺伝子の形で狭義のCVIDを再定義することと思われる。

2.CVIDの定義(除外診断)

 CVIDは,欧州免疫不全症学会(ESID)によれば,「2歳以上(多くは10歳代以降)で発症する低γグロブリン血症で,同種血球凝集素の欠損,あるいはワクチンへの低反応を示し,既知の免疫不全症ではない疾患」と定義されている。漠然とした定義であり,除外が重要であることは明らかである。除外すべき疾患の第一は非免疫不全症である。まず蛋白漏出やthird spaceへの蛋白喪失は除外すべきである。低栄養状態なども鑑別に入る。染色体異常も除外項目となっており,小奇形など特徴的身体所見があれば染色体検査は必須である。その他では悪性腫瘍や化学療法・免疫抑制薬の使用などが除外項目となる。悪性腫瘍の診断時にIgGが正常で,化学療法などの治療後に低下した場合は除外する。「CVIDの合併症」として悪性腫瘍や自己免疫疾患などがあり,発症前に既に易感染性を示したり,IgGが低値であったりした場合は,「CVIDを背景とした発症」の可能性は否定できない。
 既知の原発性免疫不全症も否定しておく必要があり,ややこしい。特に注意すべき疾患としてまず,(1)X連鎖無γグロブリン血症があげられる。BTK遺伝子の変異部位などによりB細胞が少数検出されたり,無γグロブリン血症ではなく,低γグロブリン血症を示す場合がある。患者数も多く,CVIDを疑った男性患者では第一に否定が必要である。男性では同様にSH2D1AあるいはXIAPを検討しておくべきである((2)X連鎖リンパ増殖症候群:X-linked lymphoproliferative disease: XLP)。特にEBVへの脆弱性や血球貪食症候群を伴った場合には要注意であるが,必ずしも必発症状ではないため,ひとまずCVIDと診断されることも稀ではない。また(3)X連鎖高IgM症候群の約2/3では実際にIgMが高値になっておらず,IgG,IgAは低値を示す。従って男性ではCD40L発現(T細胞刺激後のCD40L発現)を検討しておくことが望ましい。また男女いずれの場合もAIDは検査しておいて良いものと思われる(患者数は少ない)。(4)胸腺腫を伴う免疫不全症(Good症候群)もその数は比較的多い(病因は明らかになっていない)。年長での発症及びB細胞がほぼ欠損することが特徴であるが,年長者では胸腺腫を確認しておく必要がある。その他では(5)非典型的重症複合型免疫不全症(非典型的SCID)(例えばDNA ligase IV欠損症など)も比較的年長になってCVIDと診断され,後に精密検査で除外されることがある。
 このようにCVIDと最終診断するには大変な労力が必要になる。除外は1つのパッケージとして行うべきであり,そのためにはamplicon sequencingにて関連遺伝子を網羅的に解析するのが本筋であると考えている。筆者らはかずさDNA研究所とそのシステムについてvalidationを行おうとしているところである。
 一般的には,典型的な既知の免疫不全症ではない抗体産生不全症はCVIDに分類しておくのが妥当である(後ほど専門家により鑑別を行う必要がある)。表2に除外すべき疾患(及び責任遺伝子)につき記載した。

3.CVIDの分類

 ヨーロッパなどでは,B細胞数,記憶B細胞の割合,transitional B細胞の比率,CD21の発現低下の有無,などによりCVIDを分類する試みがある(表3)5)。ここでは臨床症状との対比を行っているが,脾腫はクラススイッチ記憶B細胞が少ない群,比較的保たれているがCD21low細胞が多い群により頻繁に認められる。リンパ節腫大は一方クラススイッチ記憶B細胞が少なく,CD21low細胞が多い群あるいはtransitional B細胞が多い群に頻繁に認められる。
 今井,野々山らは,CVIDをB細胞欠損型,T細胞欠損型,B/T欠損型,B/T正常の真のCVIDに分類することを提唱している(Fig.1)6)。この分類により少なくとも2-1に属するB細胞欠損症及び複合型免疫不全症との線引きがなされることになる。ここではB細胞新生能,B細胞数の指標としてそれぞれ,sjKRECs (signal joint kappa-deleting recombination excision circles),cjKRECs (coding joint KRECs)を,T細胞新生能の指標として,TRECs (T-cell receptor excision circles)を用いている。この系はrealtime PCRにて簡単に測定することができるが,B細胞ではCD19/CD20陽性細胞数がcjKRECsの,またCD4+CD45RA+(+CD31+)細胞がrecent thymic emigrant cells (RTE)としてTRECsの,代替え指標として用いることができる。一方,CD19/CD20はsjKRECsを反映しない7, 8)。この分類の最も優れている点は,それぞれの亜群で臨床像・予後が異なることであり,B/T欠損型で最も重症である。
 さらに病態の理解を深めるとすれば(1)免疫グロブリンのレパートアや体細胞超変異(somatic hypermutation: SHM)の検討により(クラススイッチや)SHMに関与する分子群やpathwayに異常がないかを明らかにすることであり,もう1つは(2)in vitro分化系にてnaïve B細胞から形質細胞への分化が正常に行われるかを検証することであろう。この2軸が加わることで,さらにCVIDの分子基盤が細分化されることが期待される。筆者らはB細胞亜群(transitional Bから形質細胞までの10段階の細胞)の10 parameter解析,KRECs/TRECs測定がroutine化し,加えて免疫グロブリンのレパートアやSHMの計測,in vitro分化系を導入しつつある。

4.CVIDの免疫学的特徴

 CVIDとされる疾患群においては,あらゆる免疫学的異常が報告されていると言っても過言ではない1~3, 9)。その中でB細胞分化異常は特徴的である。Fig.2に末梢でのB細胞分化段階を示した。患者末梢血にはnaïve B細胞は存在するが,クラススイッチ記憶B細胞(CD20+CD27+IgM-IgD-細胞)や形質芽球は減少が認められる。この所見はCVIDの主幹となる免疫学的特徴といえる。一方B細胞数が1%未満というものもあり,B細胞欠損症との異同は,B細胞がゼロでない限りは表面抗原分析上明確ではない。
 その他の免疫異常としては,T細胞新生能の低下,T細胞増殖能の低下,T細胞シグナル伝達異常,サイトカイン産生異常,アポトーシスの異常や,TCR Vβ repertoireの偏り等が報告されている。自験例でも半数以上のCVID患者でTCR Vβ repertoireの偏りを観察している。また樹状細胞の機能不全や,数の低下などを示す報告もある。テロメア長の短縮を認める症例もある。これらの混乱した情報は,CVIDの一群を取り上げて,その欠陥を一般化しようとする研究から生じたものであり,CVIDは多様な疾患から成り立っているというコンセンサスの元により本質的な病態解明が望まれる。

5.CVIDの臨床症状

 CVIDの臨床症状は様々であり,抗体産生不全に起因する症状に加え,その病因や年齢因子を反映し,臨床症状の軽重の差は大きい。全く無症状のまま他疾患のスクリーニングの中で発見されることもあり,成人の場合にはそのようなケースも少なくない。大規模調査によれば感染症のみの症状を呈するCVIDは25%前後であるという10, 11)
 Grimbacherらのgroupが提唱するCVIDの重症度スコアリングシステムを表4に示す1)。診断上また治療上,層別化は重要である。感染症以外のeventを合併するCVIDでの生命予後は不良(診断25年後の生存者は約半数)との報告がある。

1)感染症:感染症としては上下気道炎が多く,細菌感染症の頻度が高い。特に呼吸器感染症による気管支拡張症は重要で30~50%程度の患者で認められると共に,生命予後に大きく関与する。慢性感染症よりも重症感染症がその成立に関与しているとされている。
 Epstein Barrウイルス(EBV)感染症,サイトメガロウイルス(CMV)感染症などのヘルペス感染症,パピローマウイルス感染症,持続性パルボウイルス感染症など T細胞機能不全を疑わせる症例も散見される。

2)自己免疫疾患:全国調査においては,自己免疫疾患を合併するものは全体で19%,40歳以上で36%であった。自己免疫疾患として最も多いのは,自己免疫性溶血性貧血(AIHA)や自己免疫性血小板減少症(ITP)であるが,関節リウマチ,炎症性腸疾患,多発筋炎,乾癬,SLE,悪性貧血などさまざまな疾患を認める。大規模調査によれば血球減少は11~20%で認められ,しかも免疫不全症状に先行することもしばしばである10, 11)。AIHA,ITPはそれぞれ7%,14%程度で認められる。Evans症候群と診断される疾患ではALPS (autoimmune lymphoproliferative disease)やRALD (Ras associated ALPS like disorder)の鑑別が必要であるが,CVIDでも4%にAIHA+ITPを合併する12)。一部の病態に腸内細菌叢の偏りが関与するかは今後の検討課題であろう。

3)悪性腫瘍:悪性腫瘍ではリンパ系悪性腫瘍が多いが,甲状腺腫瘍,子宮頸癌消化器系腫瘍も散見される。悪性リンパ腫の発症危険度は12~18倍,胃がんの発症危険度は7~16倍とされている1, 11, 13)。悪性リンパ腫ではB細胞由来が多く,EBVは陰性が多いとされている。全国調査において,悪性腫瘍の合併は全体で10%,40歳以上で19%であった。

4)消化管症状
 消化管症状を呈する症例は多く,全国調査でも約1/3で認められた。多くは下痢・消化管感染症であり,キャンピロバクターなどに加えて,サルモネラなどの細胞内寄生菌,CMV腸炎などが報告されている。また結節性リンパ様増殖(nodular lymphoid hyperplasia: NLH),萎縮性胃炎,炎症性腸疾患も有名である。NLHは約8%の患者で認められる10, 11)

5)肉芽腫性病変
 肉芽種病変はリンパ組織,肺,肝臓や皮膚などに認められ,肺が最も多い。その頻度は8~22%とされている。CVIDにだけ多いその機序は不明であり,感染症による反応なのかどうかについても未だに明らかになっていない10, 11)
 その他身体的特徴としては,肝脾腫を呈する症例が比較的多い程度であり,皮疹(アトピー様乾癬様,多型滲出性紅斑様など),神経症状,発達遅滞などの合併も認める。ただし発達遅滞を認めるCVIDが真のCVIDであるかは検証が必要である。

6.現在までに明らかになっているCVIDの責任遺伝子

 以下は広義のCVIDであり,1)~ 6)にあげる疾患はIUIS新分類では「抗体産生を主とする免疫不全症2.2のうち原因が明らかになったもの」として,2-2の中に「狭義のCVID」から独立して記載されている。

1)ICOS欠損症
 ICOS欠損症は分子異常が示された初めてのCVIDである。今までに同定された遺伝子変異はしかし2種類だけ(ドイツ及び本邦)であり,稀なCVIDと言える14, 15)。ICOSはCD28ファミリーに属する共刺激分子であり,CD28,CTLA-4,PD-1などがその群に属する。活性化されたT細胞に発現し,T細胞分化,サイトカイン産生,T細胞依存性抗体産生などに重要とされている。
 患者では小児期から成人期に発症する様々な感染症を呈し,結節性リンパ様増生,間質性肺炎,自己免疫疾患(血球減少,炎症性腸疾患,関節リウマチ,乾癬など),パピローマウイルスによる子宮頸癌など,CVIDが呈するほとんどの症状を示している。IgGは低下するが,IgM,IgAの低下の程度は様々である。私たちが検討した症例ではTh1,Th2,Th17サイトカインの産生低下,記憶CD4T細胞の減少,Tregサブセットの減少,CTLA-4の発現誘導不全が認められ,さらにT-bet,GATA-3,MAF,RORC inductionにも欠陥があることが示された15)。ICOS欠損マウスでもエフェクターT細胞の機能低下が報告されているが,逆に自己免疫への傾向を示唆した論文も少数認められる。従って,ICOS欠損症では,活性型及び抑制性両者のT細胞の分化あるいは維持に問題があり,そのいずれが主に犯されるかによって,感染症が主体となるか,自己免疫疾患が主体となるかが決定されている可能性がある。
 本邦の姉弟例では,姉はγグロブリン補充が感染コントロールに必須であり,また関節リウマチや乾癬に対してステロイドやMTX治療を必要としているが,弟はIgG:700mg/dl前後で推移し,初診から5年以上を経過し,40歳を超えても入院を要する感染症の罹患はなく,γグロブリン補充も必要としていない。姉が診断されなければ,外来通院している可能性は極めてゼロに近い。清潔かつ抗菌薬が容易に手に入る国においては,多くのCVIDが見逃されているのではないかと思わせる1つの証左であろう。

2)TACI異常症
 2005年にTACI異常症とIgA欠損症,CVIDとの関連が報告されたが,その因果関係は複雑である16~18)。ヘテロ異常で健常者と患者が混在する家系や,複合ヘテロ接合体異常,ホモ異常などが報告されているが,TACIはCIVD発症の1つの因子であり,さらに別の修飾因子が加わって発症するのではないかと考えられている。TACIはtransmembrane activator and calcium-modulating cyclophilin ligand interactorの略で,TNF受容体スーパーファミリーに属し(TNFRSF13B),BAFF (B cell activating factor),BCMA (B cell maturation antigen)やAPRIL (a proliferation-inducing ligand)などをリガンドとしている。リガンドとの会合により,B細胞ではクラススイッチが誘導される。多くの患者ではTACI変異があってもその発現が認められることも解析を困難にしている。
 患者ではCVIDの大半の症状を呈しており,今までに600名近い患者が同定されている(日本での確定症例は1桁にとどまっている)。B細胞数は正常であるが,時に著減する患者も散見される。クラススイッチ記憶B細胞の減少はCVID全般の傾向とかわらない。IgA,IgMは低値をとることが多いが,IgA正常,高IgMの場合もあり様々である。両アリルでの変異ではAPRILへの会合が低下するが,最も頻度の高い変異は片アリルでのC104R,A181Eであり,健常人ではrare SNP (2%程度)となっている。新たな変異が同定された場合には(あるいは既知のヘテロ変異でも)病的意義を検証することが難しい疾患群である。

3)CD19/CD21/CD81欠損症
 CD19/CD21/CD81はB細胞において複合体を形成している。B細胞に抗原刺激が入ると,抗原とC3dが会合し,B細胞受容体とCD19/CD21/CD81複合体の両者からのシグナルが伝達される。B細胞におけるdual signaling modelである。CD19欠損症では,B細胞数は正常で,クラススイッチした記憶B細胞数は減少している。IgGは低値で,特異抗体産生能は低下しており,小児期から感染症を反復する。抗原受容体刺激によるCa流入は低下している19, 20)。CD21欠損症では,IgG, IgAは低値をとるものの,抗原特異的抗体産生能は比較的保たれている。比較的軽症なCVID群といえる21)。CD81欠損症ではIgG低値,IgAやや低下,IgM正常であり,血管性紫斑病が認められた。CD81はCD19の表出にも重要であり,その欠損によりCD19発現は低下し,CD19欠損症と同様のB細胞分化異常とシグナル異常が認められた22)

4)CD20欠損症
 CD20は骨髄のearly pre-Bから発現が認められる代表的B細胞抗原である。ノックアウトマウスではB細胞数や抗体産生は正常であったが,Ca流入に異常を認めている。ヒトのCD20異常症では低IgG (IgM,IgA正常)が認められる。クラススイッチ記憶B細胞が減少し,抗原刺激によるCa流入に欠陥があることから,CD19/CD21/CD81欠損症と類似した状態ということができる23)。3),4)はCaシグナルに異常のあるCVIDと捕らえることができる。今後CD19/21/81やCD20シグナル系に関係する分子異常がCVIDの責任遺伝子として同定される可能性がある。

5)BAFF-R欠損症
 BAFF-R欠損症は姉弟例の報告が唯一である。BAFF-RはTNF受容体スーパーファミリーに属し(TNFRSF13C),B細胞に表出され,BAFFによって刺激が入り,NFκBの誘導→抗アポトーシスに働き,B細胞の生存に深く関与している。BAFF-R欠損症ではIgG,IgMの低下を認め,IgAは正常であった24)。しかしIgGの低下は一例ではごく軽度であった。姉弟での表現型の差異などから,BAFF-R以外の因子が貢献していると想定されている。
 T細胞依存性抗体産生は正常であるが,T非依存的抗体産生に欠陥がある。また自己免疫やリンパ増殖などは認めていない。可溶性BAFF-Rが減少するCVIDの一群があり,BAFF-Rの調節領域異常があるのではと推測されている。

6)Msh5異常症
 Msh5はDNAミスマッチ修復や,減数分裂での相同組換えに関与するが,クラススイッチ組換えでの役割も明らかになっている。2つのSNPの組み合わせ(L85F/P786S)がIgA欠損症やCVIDと関連していると報告されている25)

7)PLCγ2欠損症
 PLCγ2はB細胞,NK細胞,マスト細胞でのシグナル伝達において重要な分子である。PLCγ2をコードする遺伝子の片アリル変異により,IgM,IgAの低下,NK細胞の減少,記憶B細胞の減少が認められることが明らかになった。患者では全例で寒冷じん麻疹を発症し,半数以上で抗核抗体が陽性,全身性のアレルギー性疾患も呈している。機能獲得型変異であるが,恒常的な刺激によりB細胞がanergyになっているという仮説が提唱されている。IgGが低値をとる患者も27名中3名に認めた。既に27名の報告があり,自己炎症性疾患と自己免疫疾患,免疫不全症を呈する疾患として,これらの現象をつなぐ分子異常として注目される26)

8)LRBA欠損症
 LRBA欠損症は重症のCVID (あるいはCID)として報告されている。5名の患者が同定されているが,全例がホモ変異である。早期よりITPを発症し,ついで副鼻腔炎や肺炎などの気道感染症が明らかになる。炎症性腸疾患や,脳内肉芽腫などを合併することもある。LRBA欠損B細胞ではautophagyの異常があり,飢餓状態でのB細胞は細胞死を起こしやすい。B細胞数は低値あるいは正常下限程度であるが,低γグロブリン血症(IgG,IgM,IgA)を呈する27)。自己免疫疾患を高率に合併する疾患であり,LRBAの機能については今後さらに詳細に検討される必要がある。

7.病因へのアプローチ

 CVIDでは家族例や遺伝歴を認める症例が少ない。日本においては10%程度で,多く見積もっても20%には到達しない。今まで明らかになった責任遺伝子は10を数え,近年さらに,P13K p85αやMsh5などの異常症も報告されているところであるが,これ以外にも最低10以上の原因遺伝子が存在すると推測されている。マウスモデルや分子機能から推測された共刺激分子,例えばBAFF-RのリガンドであるBAFF,APRIL,BCMAなどは,BAFF-R欠損症,ICOS欠損症,TACI異常症の存在からは重要な候補遺伝子であったが,未だに遺伝子変異は特定されていない。少なくともmajorなCVID遺伝子ではないと予想されている28)。逆に言えばBAFF-R欠損症やICOS欠損症もその数は10名に満たず,TACIも単独異常でない可能性があることから,共刺激分子異常症はCVIDの主たる責任遺伝子ではない可能性がある。
 予後の推測や治療法の選択及び開発にあたっては原因を同定する作業は必須である。原因探索にあたっては除外診断がどこまで行われたかという点が重要である。CVIDとしてフォローされていたBTK異常症(IgG,IgMなど測定可能)や非典型的SCID/CID (軽症型ADA,RAG,LIG4,Artemis異常症)も経験している。その点ではKRECs,TRECsによる分類を活用し,KRECs陰性/TRECs陽性,KRECs・TRECs陰性群ではそれぞれB細胞欠損症variant,非典型的SCIDを除外しておくことが肝要である。除外診断は可能な限り完璧である必要があろう。
 私たちはCVIDの原因を探索するため200名前後の患者において臨床症状,データ,免疫学的データ,詳細な免疫細胞亜群解析,KRECs/TRECs解析,所見やデータから推察される既知の疾患の除外を行った上で,3つのアプローチを用いて検討をおこなったのでその概略と結果を紹介したい。
 1つは近親婚患者においてhomozygosity mappingを行い,その領域にmapされる遺伝子をFLX454にてlong read sequenceする方法である(防衛医科大学が主体となった共同研究)。実際の検討では候補遺伝子が4,000前後程度残り,塩基配列決定においての省力化にはつながらなかった。2つめは,免疫に関連した分子群を各種データベースから抽出して,濃縮チップを作成し,同様にlong read sequenceで全エクソン領域を解析する方法である。実際には2,476遺伝子を抽出し,8名のCVID患者においてエクソン解析を行った。3番目の方法としては,すでに広く行われている全エクソン解析も実施している。いずれの場合でも家族歴がある症例を優先してpick upし,かつ若年発症で,特徴的な所見を有するCVIDを選定して検討した。日本人特有のSNPも相当数検出されることになり,現時点ではdbSNP137に加えて,日本人SNP情報を収集しつつ,標的を絞っているところであるが,実際にこれらから明らかになった遺伝子の大半は既知遺伝子であり,BTK異常,Fanconi貧血の責任遺伝子異常,STAT1 gain-of-function異常,DNMT3B異常などが同定された。明らかに臨床症状,検査データ,免疫学的データからは推察できなかった疾患であり,比較的一般的な疾患の稀な表現型を捕まえたものと考えている。その点で今一度除外診断に戻れば,除外診断が不十分であったと言わざるを得ない。またSTAT1異常症を除けば片アリル遺伝子変異(候補遺伝子)の意義を探索できていない。実際にはhomodimer,trimer形成をするものや転写因子ではheterologous異常を候補として残しているが,それ以外は手つかずとして残っている。これらの解析から明確になりつつあることは,解析しているCVIDの大半はおそらく常染色体劣性遺伝形式をとらないであろうということである。全世界で網羅的候補遺伝子探索が行われ,少なくともmajorな疾患が同定されていないことからは,AR疾患は稀だと思われる。
 現在はAD形式をとる家系や孤発例に焦点を絞り,家族検体を加えた遺伝子解析を行い,片アリル異常を捕まえようとしている。ここでの問題は晩期発症者や軽症患者をどう陽性者として取り込むかであると思われる。いずれにせよ候補遺伝子については,100例以上のCVIDを解析することにより,(複数症例での同遺伝子内mutationなど)浮き上がる候補もあるものと予想している。
 これからの課題は体細胞変異や,後成的変化をどう捕まえていくかであろう。その点で例えばB細胞へIL-4R/CD40刺激を加えsomatic hypermutationやNFκB核内以降を解析し,その機能解析と刺激前後の細胞でのRNA-Seqを併用する手法や,メチローム解析なども必要になってくると考えている。

文  献

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