演題詳細

教育講演 / Educational Lecture

【再】教育講演47 (Educational Lecture 47) : ガイドライン(標準治療)

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日程
2013年10月13日(日)
時間
08:45 - 09:15
会場
第14会場 / Room No.14 (札幌市教育文化会館 3F 研修室305)
座長・司会
鈴宮 淳司 (Junji Suzumiya):1
1:島根大学医学部附属病院腫瘍センター 腫瘍・血液内科
 
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真菌感染症の予防と治療:update

演題番号 : EL-47

福田 隆浩 (Takahiro Fukuda):1

1:国立がん研究センター中央病院 造血幹細胞移植科

 

はじめに

 真菌感染症は,造血器悪性腫瘍に対する化学療法や造血幹細胞移植後の致死的な感染症の一つである。中でも,侵襲性カンジダ症と侵襲性アスペルギルス症は発症頻度が高く,発症後の予後も不良であるため,その対策は重要である。2002年以降,国内でも新規抗真菌薬が多数発売され,真菌感染症の診断・治療に関する考え方も大きく変わってきた(図1)。2007年に発行された第2版の「深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2007」1)では,検査・治療の選択順位やエビデンスレベルを表示されたが,その後,血液・造血幹細胞移植領域における真菌感染対策に関する海外のガイドラインも改定され2, 3),国内のエビデンスも蓄積された。これらの変化を受けて,2012年に日本造血細胞移植学会のガイドライン委員会より出された「移植後早期感染管理ガイドライン:第2版」4)では真菌感染症に関する記載が大幅に増加した。
 造血器悪性腫瘍患者における真菌感染対策は図2に示すように大きく4つに分けられる。確定診断がついた後に行う標的治療,ハイリスク患者に対して症状がない時期から投与するのが予防投与,好中球減少期の発熱時に真菌感染症を疑った場合に行うのが経験的治療,早期治療である。本稿では,侵襲性カンジダ症と侵襲性アスペルギルス症に分けて造血器腫瘍領域におけるこれらの真菌感染症への対策について概説する。

(A)侵襲性カンジダ症

 臨床的に重要な侵襲性カンジダ症として,血液培養でCandidaを検出するカンジダ血症と,肝臓や脾臓に多発小膿瘍を形成する慢性播種性カンジダ症がある。原因真菌として以前はCandida albicansが最も多かったが,近年,造血器腫瘍患者を対象とした報告ではC. glabrataC. kruseiなどのnon-albicans Candidaの検出が増加している5)。侵襲性真菌感染症の診断基準として,近年,改訂版EORTC/MSG診断基準(表1)を用いられることが多い6)。血液培養が陽性となる真菌血症は確定診断例(proven fungal infection)となる。同診断基準では,真菌感染症を来たしやすい宿主因子として,遷延性好中球減少(500/μl未満が10日間以上),同種造血幹細胞移植,ステロイド投与や移植片対宿主病(graft-versus-host disease: GVHD)の合併などがあげられている6)。この中でも,好中球減少は特に重要であり,100/μl以下の場合,真菌感染症のリスクがさらに高くなる7)。また中心静脈カテーテル留置は,侵襲性カンジダ症のリスクファクターとなる1)。このようなリスクを有する例で発熱を認めた場合には,カンジダ血症を鑑別診断の一つして疑い,血液培養を行うと共に,βDグルカンの測定を行うことは重要である。βDグルカンは,カンジダ血症の75%程度で陽性となり,血液培養よりも早期に陽性となる場合もある8)。またカンジダ血症を発症した患者の16%に眼球感染症を合併したという報告があり9),カンジダ性眼内炎の精査のため眼底検査が推奨される。

<侵襲性カンジダ症に対する標的治療>
 好中球減少患者におけるカンジダ血症の推奨治療に関してはエビデンスが少ない。カンジダ血症の治療に関する大規模無作為化比較試験がいくつか行われているが,大多数は好中球減少を伴わない患者を対象としている。これらの試験の中で好中球減少患者にしぼって比較してみると,ミカファンギン(micafungin: MCFG)やキャスポファンギン(caspofungin: CPFG)などキャンディン系抗真菌薬はリポソーマルアムホテリシン(liposomal amphotericin B: L-AMB)などポリエン系抗真菌薬と少なくとも同等以上の治療成功率が期待でき,副作用は少ないという利点がある10~12)。また発熱性好中球減少症患者における抗真菌薬の無作為化比較試験においても,治療開始時にカンジダ血症を認めた症例も含まれている。少数例ではあるが,カンジダ血症に対する治療効果を比較すると,同様にキャンディン系抗真菌薬やL-AMBの有効性が示されている13, 14)。2009年IDSAガイドラインでは,好中球減少期のカンジダ血症に対する推奨治としてMCFGやCPFGなどのキャンディン系薬剤とL-AMBが中心となる15)
 血液培養の結果からカンジダ血症が疑われた場合,菌種の同定までに時間がかかることが予想されるが,特に好中球減少患者においては抗真菌薬治療の開始が遅れないようにする必要がある。近年,造血幹細胞移植患者においてはフルコナゾール(fluconazole: FLCZ)予防が行われている場合が多いため,non-albicansのカンジダ血症の頻度も近年増えてきており治療薬を選択する際には注意が必要である。
 好中球減少患者におけるカンジダ血症に対する治療が成功するか否かは,患者の好中球数回復が最も重要であり,それ以外にも発症時の臨床所見,重症度,菌種(+感受性),治療薬の毒性に関するcomorbidity,カンジダ定着の既往または抗真菌薬治療歴などにも影響される。また(可能であれば)中心静脈カテーテルを可能な限り抜去することを2009年IDSAガイドラインでも推奨している15)

<侵襲性カンジダ症に対する予防投与>
 海外のガイドラインでは,急性骨髄性白血病・骨髄異形成症候群に対する寛解導入療法後や同種造血幹細胞移植後の抗真菌薬予防を推奨している2, 3)。メタ解析によると,同種移植後は抗真菌薬予防投与により真菌感染症の発症率や全死亡率が減少し,化学療法後は真菌感染症の発症率や真菌感染症による死亡率が減少していた16)。侵襲性アスペルギルス症の既往がない大多数の同種造血幹細胞移植患者において,好中球減少期はカンジダに対する予防が中心となる(図2)。
 同種移植患者における真菌感染予防として最もエビデンスレベルが高いのはFLCZ予防投与であり,大多数の患者で推奨される。国内でも「造血幹細胞移植患者における深在性真菌症の予防」として認可された。海外の無作為化比較試験の結果17),欧米ではFLCZ 400 mg/day投与が推奨されているが2, 3),至適投与量についての十分な検討はなされていない。国内ではFLCZ 100 mg~200 mg/day投与が用いられることも多いが18),認可された用量は400 mg/dayである。FLCZ予防投与の期間は,欧米では同種移植後75日~100日,または免疫抑制剤中止まで投与する施設が多い2)。しかし,予防投与期間を比較したエビデンスはなく,至適期間については現時点では明らかではない。国内の添付文書では,好中球減少が予想される数日前から投与を開始し,好中球数が1,000/μlを超えてから7日間投与である。欧州のガイドラインでは,FLCZは好中球減少期の真菌感染予防薬(A-I)として推奨されている3)。MCFGは,海外で行われたFLCZとの無作為化比較試験の結果を基に19),国内で同種移植患者における抗真菌予防として保険適応がある。ただし認可されている投与量は50 mg/dayである。
 侵襲性カンジダ症の既往がある場合,少なくとも好中球減少期はカンジダ感染症に対する治療量で二次予防を行うことが推奨される2)。FLCZ耐性のCandidaによるcolonizationや侵襲性カンジダ症の既往がある場合は,MCFGの予防投与が推奨される2)

(B)侵襲性アスペルギルス症
 遷延性好中球減少,同種造血幹細胞移植,ステロイドやGVHDの合併に加えて,施設や工事現場などの環境要因などが侵襲性アスペルギルス症のリスクファクターとなる1)。このようなリスクを有する例では,まずアスペルギルス症を疑って,画像診断と血清診断の両方を行っていくことが重要なポイントである。
 改訂版EORTC/MSG診断基準6)における侵襲性アスペルギルス症の確定診断例(proven invasive aspergillosis: IA)は感染巣からの菌学的ないし病理組織学的診断が得られた場合と定義されている。しかし好中球減少患者では組織生検が行えない場合が多く,生前の確定診断例は少ない。臨床診断例(probable IA)は病巣からの菌学的ないし病理組織学的診断は陰性あるいは未施行であるが,臨床的に本症を強く疑う症例,すなわちリスクファクターを有する宿主で,真菌症を疑わせる臨床症状があり,典型的な画像所見と血清診断が陽性の場合である。
 血中アスペルギルス抗原(ガラクトマンナン抗原)は,改定版EORTC/MSG基準ではprobable IAの診断根拠の一つとして認められおり6),侵襲性アスペルギルス症を疑う症状・所見を認めた場合には必須の検査として推奨される1, 2)。また早期治療の指標として血中アスペルギルス抗原検査をモニタリングする意義に関する報告もあり20),特にリスクが高い時期はモニタリングを行うことが推奨される。アスペルギルス抗原検査法として,感度が高いEIA法(プラテリア)を用いることが重要であり,OD indexのカットオフ値を従来の1.5から0.5まで下げて用いることで,臨床的有用性が高くなる21, 22)。しかし,擬陽性・擬陰性についても注意が必要であり,臨床症状やCT所見なども含めて総合的に判断する必要がある。特に消化管GVHD合併時にはアスペルギルス抗原が擬陽性となる頻度が高い23)。逆に抗アスペルギルス作用のある抗真菌薬使用例では偽陰性となりやすい21)。侵襲性アスペルギルス症ではβDグルカンも陽性となる場合があるが,カンジダなど他の真菌による感染症との鑑別はできない。遺伝子診断はリアルタイムPCR法が検査センターレベルで可能である。
 寛解導入療法後や同種移植後に侵襲性アスペルギルス症を疑う症状・所見を認めた場合,速やかに胸部CT検査を行うことが推奨される1, 2)。結節影の周囲をスリガラス影が取り囲むhalo signは早期診断に重要な所見であり,この段階で治療を開始した方が侵襲性アスペルギルス症の予後がよいという報告がある24)。改定版EORTC/MSG基準では,辺縁鮮明な結節状影,halo sign,楔状浸潤影,air-crescent signなどを認めた場合,臨床的診断根拠の一つとしている6)。胸部X線が正常でも胸部CTでは結節状影や浸潤影が描出される場合があり,抗菌薬不応性発熱,咳嗽,呼吸困難,血痰,胸膜性胸痛などがみられる場合は,積極的にCT撮影を考慮する。この場合はhigh resolution CTまたはthin slice CTが望ましく,造影は用いずに単純CTでもかまわない。
 また好中球減少患者や同種移植後などのハイリスク患者では喀痰や気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid: BALF)における菌検出も重要である。胸部CTにおいて侵襲性アスペルギルス症を強く疑う所見があり,血中アスペルギルス抗原が陰性の場合,BALF中のアスペルギルス抗原陽性所見は診断根拠として有用である25, 26)。また免疫能の低下した血液・移植患者では,他の感染症を併発していることも多いため,気管支鏡検査を行いBALF検体を採取する意義は高い。

<侵襲性アスペルギルス症に対する標的治療>
 侵襲性アスペルギルス症に対する標的治療として,長い間アムホテリシンB(amphotericin B: AMPH-B)がゴールドスタンダードであったが,近年ボリコナゾール(voriconazole: VRCZ)が従来型のAMPH-Bを凌駕する成績をおさめ,現在は第一選択薬となっている27)。VRCZは,副鼻腔や中枢神経領域のアスペルギルス症でも良好な組織移行性が期待され第一選択薬となる。L-AMBは,侵襲性アスペルギルス症の標的治療として3mg/kg/dayと10mg/kg/dayを比較したエビデンスがあり28),VRCZ投与が困難な場合の代替薬と考えられている。治療期間について定まった見解はないが,画像所見をフォローしながら少なくとも4~6週間以上の長期治療が必要となる1)。なお,侵襲性アスペルギルス症による肺病変は,治療に反応している場合でも,治療開始後早期や好中球回復時に胸部CTで病変サイズの増大を認めることがある29)
 同種造血幹細胞移植後に侵襲性アスペルギルス症を発症した場合の予後は不良であり,約8割前後の患者が死亡する30)。VRCZの登場後は治療効果の向上がみられるが,それでも同種移植患者の半数近くでは無効である。このため作用機序の異なる2種類の抗真菌薬の併用,具体的にはアゾール系とキャンディン系抗真菌薬の併用,またはポリエン系とキャンディン系抗真菌薬の併用が試みられている。比較試験ではないが,侵襲性アスペルギルス症に対する二次治療として,VRCZ+CPFG併用療法の方がVRCZ単剤よりも有効であった31)。またL-AMB単剤とL-AMB+CPFG併用療法を比較した小規模な無作為化比較試験では,併用群の方が治療反応性が高かった32)。まだ論文化はされていないが,侵襲性アスペルギルス症に対する初期治療として,VRCZ単独とキャンディン系抗真菌薬であるanidulafungin(本邦未発売)とVRCZの併用療法を比較した大規模な無作為化二重盲検比較試験の結果が公表された33)。全対象患者において併用療法の方が生存率が高い傾向を認め,アスペルギルス抗原を用いて診断されたprobable IA例においては併用療法の方が6週後の生存率が有意に高かった。以上の結果から,重症型の侵襲性アスペルギルス症においては,VRCZとキャンディン系抗真菌薬の併用療法も有力な選択肢の一つと考えられる。

<侵襲性アスペルギルス症に対する経験的治療>
 急性骨髄性白血病に対する寛解導入療法後や同種造血幹細胞移植後は,侵襲性アスペルギルス症などの真菌感染症は早期診断が困難である一方,診断が確定するまで治療を遅らせた場合には予後不良となることが多い。したがって真菌感染症が疑われる場合には,早期診断を試みると同時に,早期に治療を開始することが重要である。
 発熱性好中球減少(febrile neutropenia: FN)に対して広域抗菌薬を4~7日間投与後も解熱効果が得られなかった場合,真菌感染症を疑って抗真菌薬投与を開始することが古くから行われており,経験的治療と呼ばれている。一方,単なる広域抗菌薬不応性発熱だけではなく,アスペルギルス抗原など真菌マーカーや胸部CTを指標とした早期治療が近年,試みられている(図2)。しかし,真菌マーカーモニタリングの方法や頻度,早期治療として投与する薬剤・投与量などについてのエビデンスは乏しく,まだ確立した方法とは言えない3)。欧州で行われたFN患者における経験的治療と早期治療の無作為化比較試験では,早期治療群の方が抗アスペルギルス薬の総投与量が少なかったが,侵襲性アスペルギルス症の発症率は有意に高かった34)。国内からの報告では,アスペルギルス抗原や胸部CTを指標にした早期治療を同種移植後早期に行うことにより,侵襲性アスペルギルス症の発症率や予後を増悪させることなく,抗アスペルギルス薬の総投与量が有意に減少した35)。経験的治療と早期治療の優劣は,現時点では明らかではなく,患者背景や施設における侵襲性アスペルギルス症の頻度を参考にして選択する必要がある36~38)
 FN患者における経験的治療として用いられる抗真菌薬について多数の無作為化比較試験が報告されている。近年,寛解導入療法後や同種造血幹細胞移植後はFLCZによりカンジダ予防が行われている場合が多いため,FN時には抗アスペルギルス作用を有する抗真菌薬を使用する。通常は4~7日間以上持続する広域抗菌薬不応性FNに対して,L-AMB,CPFG,MCFG,VRCZ,イトラコナゾール(itraconazole: ITCZ)などが投与されている。抗真菌薬の選択にあたっては,予防投与が行われている場合,予防薬と系統の異なる薬剤を使用する。
 L-AMBは,国内でFNに対する治療薬として保険適応が認可されており,欧州のガイドラインでは,A-Iレベルで推奨されている3)。接合菌も含む幅広い抗真菌活性を持つため,糸状菌感染症を疑う症状・所見がありアスペルギルス抗原が陰性の場合にはL-AMBを考慮する。海外で行われた無作為化比較試験では,従来型のAMPH-Bと同等の治療成功率と副作用の軽減が確認された13)。しかし同種移植後は免疫抑制剤などの腎機能障害を来たしやすい薬剤を併用することが多いため,腎機能障害の出現には十分に注意する必要がある。CPFGは,L-AMBと同等の有効率と副作用の軽減が海外の無作為化比較試験により確認された14)。国内でも,真菌感染が疑われるFNに対して保険適応が認可されており,欧州のガイドラインでは,A-Iレベルで推奨されている3)。一方,MCFGについてはFN患者における無作為化比較試験が行われていない。しかし,同系統薬剤であるCPFGのエビデンスをもとに,欧州のガイドラインでは,B-IIレベルで推奨されている3)。ITCZ注射剤は,海外のFN患者における無作為化比較試験において従来型のAMPH-Bと同等の治療成功率と副作用の軽減が確認され39),欧州のガイドラインでは,B-Iレベルで推奨されている3)。VRCZは,海外のFN患者における無作為化比較試験においてL-AMBとの非劣性を証明できず40),FNとしての保険適応が取得できなかった。欧州のガイドラインでは,B-Iレベルで推奨されている3)。しかし侵襲性アスペルギルス症を疑う症状・所見を認める場合や,早期治療を行う場合には,侵襲性アスペルギルス症に対する標的治療の第一選択薬であるVRCZ投与を考慮する。

<侵襲性アスペルギルス症に対する予防投与>
 同種造血幹細胞移植後の侵襲性カンジダ症予防として用いられるFLCZはアスペルギルスに対して無効のため,侵襲性アスペルギルス症が高頻度にみられる施設やハイリスク患者では,アスペルギルスに対する予防投与を考慮する。アスペルギルスも含めた抗真菌薬予防としては,ITCZ内用液(ITCZ-OS)による予防のエビデンスがある。ITCZは,海外から無作為化比較試験やメタ解析の報告があり41),国内では造血幹細胞移植後の抗真菌予防薬としての保険適応が認可されている。欧州のガイドラインでは,好中球減少期とGVHD合併期ともにB-Iレベルで推奨されている3)。予防効果を期待するには十分な血中濃度を維持する必要があり,カプセル剤では消化管からの吸収が不良であるため,内用液の投与が必要となる。国内で認可されているITCZ-OSの投与量は海外の報告と比較して少ないため,血中濃度を測定して投与量調整を行うことが有用となる可能性がある。ITCZ未変化体の場合トラフ値500 ng/ml以上,未変化体と活性化代謝産物であるOH体を合わせてトラフ値1,000 ng/ml以上が推奨されている42)。ITCZ-OSの予防投与を行った移植患者では,消化管毒性の割合が他のアゾール系抗真菌薬予防より多いという報告がある43, 44)。またITCZ-OSとの相互作用によりシクロホスファミド(CY)投与後の毒性が増加するという報告があるため45),大量CY投与時はITCZ予防投与を一時中止することが望ましい2)
 MCFGは,海外で行われたFLCZとの無作為化比較試験の結果を基に19),国内で同種移植患者における抗真菌予防として保険適応がある。ただし認可されている投与量は50 mg/dayであるため,カンジダ予防に関しては有効であるが,アスペルギルスに対する予防効果については不明である。抗アスペルギルス効果を期待してMCFG予防投与量を150 mg~300 mg/dayへ増量した場合の,有効性・安全性に関するエビデンスは少ない。
 同種移植後のVRCZ予防投与に関して,海外から2つの無作為化比較試験の報告があるが,現時点では予防効果の推奨度は確定していない。米国の試験では,アスペルギルス抗原モニタリングによる早期治療を併用したFLCZ予防群と比較して,VRCZ予防群で侵襲性アスペルギルス症の発症は少ない傾向があったが,無真菌症発症生存率に差はなかった20)。欧州・北米の試験では,ITCZ群で消化管毒性による中止例が多かったため治療成功率はVRCZ群の方が有意に高かった44)。欧州のガイドラインでは,好中球減少期とGVHD合併期ともに暫定的A-Iレベルで推奨されている3)。VRCZによる有害事象やbreakthrough感染症を認めた場合は,VRCZトラフ血中濃度の測定が有用である可能性があるが,十分なエビデンスは確立していない2)
 同種移植後にGVHDを合併した場合,侵襲性アスペルギルス症を発症するリスクが極めて高いため,抗アスペルギルス薬による予防法が期待されている。Posaconazoleは,FLCZとの無作為化比較試験の結果を基に46),海外ではGVHD合併時の真菌感染予防薬として推奨されているが2, 3),国内では未発売である。また急性骨髄性白血病などの化学療法後の好中球減少患者を対象とした無作為化比較試験の結果,posaconazole予防はFLCZまたはITCZ予防と比較して真菌感染症発症率が有意に低く,生存率が高かった47)
 化学療法後に侵襲性アスペルギルス症を発症した既往がある患者では,引き続いて行う化学療法後や移植後に再燃する可能性が非常に高いため,二次予防として抗アスペルギルス薬を継続する必要がある。同種移植前に4~6週間以上の抗アスペルギルス作用を有する抗真菌薬治療がなされ,画像上の病変が消失すれば,移植後の感染再発のリスクは低下する48, 49)。同種移植前に深在性真菌症の既往がある患者に対する二次予防(移植後の再燃予防)としてVRCZが有効であったという45例の前方視的臨床試験の報告がある50)。また二次予防として,L-AMBが有効であったという小児11例の前方視的臨床試験の報告がある51)
 同種移植後の好中球減少期は,HEPAフィルターを用いてアスペルギルスの経気道的暴露を減少させることが推奨されている1, 2)。特に工事現場が病院内や周囲にある場合には注意を要する。

文  献

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