演題詳細

教育講演 / Educational Lecture

教育講演22 (Educational Lecture 22) : トピックス

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日程
2013年10月11日(金)
時間
14:55 - 15:25
会場
第12会場 / Room No.12 (札幌市教育文化会館 1F 小ホール)
座長・司会
川口 辰哉 (Tatsuya Kawaguchi):1
1:熊本大学医学部附属病院 感染免疫診療部
 
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慢性骨髄性白血病に対するBCR-ABLチロシンキナーゼ阻害剤の血中濃度を用いた治療マネジメント

演題番号 : EL-22

三浦 昌朋 (Masatomo Miura):1

1:秋田大学医学部附属病院 薬剤部

 

1.はじめに

 慢性骨髄性白血病(Chronic Myeloid Leukemia,CML)に対する治療として,BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害剤(Tyrosine Kinase Inhibitor,TKI)イマチニブが導入され,CMLの予後が劇的に改善した。しかしながら一部の症例でイマチニブ耐性・抵抗性のため,期待し得る効果が得られないことがある。現在,CMLの長期予後を予測するために,分子遺伝学的効果を用いたサロゲートマーカーがイマチニブ療法に用いられている。本総説においては, CML治療戦略の1つとして,血中TKI濃度を用いた個別化治療について,イマチニブを中心にこれまでの知見について概説する。

2.Therapeutic Drug Management (TDM)

 TDMとはtherapeutic drug monitoringあるいはmanagementの略語で,薬物の血中濃度の値を基に,治療域(therapeutic window)に合わせて投与量を調整し,少ない副作用で最大の治療効果を得る治療戦略の1つである。これまでTDMの“M”はmonitoringの意味であり,治療域に薬物血中濃度を合わせることがゴールという意味合いになっていた。しかしそれでは不十分であり治療が成功したどうかまで含めて治療全般をマネジメントするという目的でmanagementのMで再定義されている。
 一般にTDM実施には,薬の効果(Pharmacodynamics,PD)と血中濃度(Pharmacokinetics,PK)の関係が明確になっていなければならない。すなわち,Fig.1のように薬の効果が得られない無効域と,期待される効果が得られる有効域,この境界線となる最小有効濃度(Minimal Effective Concentration,MEC)が明確にされ,さらに有効域と副作用発現域(中毒域)の境界線となる最小中毒濃度(Minimal Toxic Concentration,MTC)が明確化されている必要がある。イマチニブの場合,MECは1,000ng/ml以上であると考えられている(Fig.1)。
 リアルタイムに薬理効果が判定できず,一方で重篤な副作用が発現しやすい,さらに高薬価(100mg1錠当たり2,749円)な経口分子標的治療薬こそ,血中濃度をマーカーにして,個々の患者に合った最適な投与量を決定するTDMが有用であると考える。
 診療報酬改正によって,世界に先駆けて,平成24年4月からイマチニブが新たに特定薬剤治療管理料の算定対象薬剤に加わった。すなわちイマチニブの血中濃度を測定し,この数値をマーカーに今後の治療をマネジメント(TDM)することで,保険請求(初回~3ヵ月470点,4ヵ月以降235点)ができるようになった。Table1のようにこれまでレトロスペクティブな論文報告はあるが,プロスペクティブな実臨床報告は少ない。本邦でイマチニブ血中濃度が保険診療で認められたことで,日本から多施設共同前向き試験によるエビデンスの発信が期待される。

3.イマチニブの血中濃度(PK)と薬理効果(PD)の関係

 2009年のEuropean LeukemiaNet (ELN)では,イマチニブ治療開始後,3,6,12,18ヵ月の各時点で治療効果を判定し,服薬開始12ヵ月において細胞遺伝学的完全寛解(CCyR)に達成,18ヵ月において分子遺伝学的効果(MMR)に達成していることが望ましいとしている。このCCyRやMMR達成の有無とイマチニブのトラフ濃度(服薬24時間後,次回服薬直前:C0,本稿では特に記載しない限りC0を血漿中トラフ濃度とする)の関係をTable1に示した。ほとんどが血漿(plasma)を用いているが,1スタディのみ血清(serum)を用いて検討している。
 今までに報告されている11スタディのうち8スタディにおいて,CCyRやMMR達成患者のイマチニブC0値は,未達成患者のC0値よりも有意に高いと報告している1~11)。さらにイマチニブC0値1,000ng/mlをターゲット濃度としてMMR達成の有無を検討した4スタディすべてにおいて,イマチニブC0値1,000ng/ml以上の患者のMMR達成率は72.2~83.2%であり,1,000ng/ml以下の患者の達成率25.0~60.1%に比べて有意に高い(Table2)1, 5, 6, 12, 13)。このようにイマチニブの血中濃度と薬理効果は相関し,ターゲットトラフ濃度1,000ng/mlを指標に投与量の調節を図るべきと考える。
 さらに浮腫,皮疹など一部のイマチニブの副作用が,血中濃度と相関することが報告されている2, 14)。特に眼瞼浮腫や顔面浮腫の発現率はイマチニブC0値1,165ng/ml以下では5~10%であるのに対して,3,180ng/ml以上では22~28%である14)。さらに好中球減少症に関しては,イマチニブC0値1,165ng/ml以下では17%であるのに対し,3,180ng/ml以上では32%と高いことが報告されている14)。イマチニブのMECは1,000ng/mlと考えられるが,MTCに関しては現在のところ明確な値は報告されていない。しかし以上の点から3,000ng/mlを越えるイマチニブ血中濃度は避けたほうが良いと考える。

4.イマチニブ血中濃度の個体間変動

 イマチニブの標準投与量1日400mgを服用した患者のイマチニブC0値の個体間変動をTable3に示した。平均イマチニブC0値は1,226ng/mlであり,400mg標準量の投与で通常1,000ng/ml以上の血中濃度が得られる。しかし患者間変動は極めて大きく,400mg投与量でイマチニブC0の最小値-最大値は109~4,980ng/ml,変動係数(CV値)は36.8~62.9%である1, 2, 4, 5, 8~10, 12~18)
 イマチニブの健常人におけるバイオアベイラビリティーは97%以上(90%信頼区間:87.3~111%)と非常に高く,ほぼ完全に吸収される19)。そのため,この個体間変動の要因は大きく3つ考えられる。1)患者の服薬コンプライアンス/服薬-採血時間,2)薬物相互作用の有無,3)薬物動態の個体差が挙げられる。

4.1 服薬コンプライアンス/最終服薬時間-採血時間
 本稿においてイマチニブC0値は服薬24時間後と定義しているが,外来において最終服薬時間から採血までの時間が24時間±0時間のケースは極めて低い。最終服薬時間から採血までの時間としては±3時間が許容範囲であり,服薬後21時間(24時間-3時間)では13.1%高く,27時間(24時間+3時間)では11.6%低い値となる18)。そのためTDM実施の際は,最終服薬時間を正確に把握しておく必要がある。
 当院におけるイマチニブ服用外来患者の個体内変動(CV値)は平均24.1%,最小値~最大値は8.4~49.3%である。そのため1点のイマチニブC0値から投与量の変更を判断するのではなく,ELNの効果判定と同じタイミングで,3ヵ月間の3ポイントのC0値の平均値を考慮して,3ヵ月後の投与量の変更を判断すべきと考える(Fig.2)。特にノンコンプライアンス患者のCV値は大きい。
 Marin等は,アドヒアランス率90%以上の患者の93.7%はMMRに到達するが,アドヒアランス率90%以下の患者のMMR達成率は13.9%まで低下し,さらにアドヒアランス率90%以上の患者の43.8%はCMRに到達するが,アドヒアランス率90%以下の患者はCMRに到達しないと報告している12)。アドヒアランスが低い場合,服薬コンプライアンスも低下しているため,イマチニブの血中濃度測定は服薬コンプライアンスの確認にも用いることができる。

4.2 薬物相互作用
 イマチニブは主に薬物代謝酵素チトクロムP450 (CYP) 3A4によって,N-脱メチル代謝物(CGP74588)へ代謝される20)。そのためCYP3A4を誘導・阻害する薬剤や嗜好品との併用21~28),あるいはこれら薬剤との併用中止時には,イマチニブの血中濃度測定が必要である。
 一方で胃酸分泌抑制剤との併用で薬剤の溶解性が低下し,吸収量が低下することがあるが,イマチニブの場合,オメプラゾールとの相互作用は観察されていない29)。第二世代TKIダサチニブは,胃酸分泌抑制剤との併用に注意を要する30)

4.3 薬物動態の個体差
 イマチニブの約67%が肝臓から胆汁へ排泄される19)。この胆汁排泄量のうち未変化体の排泄量は投与量の約20%である。イマチニブの胆汁排泄にはATP-binding cassette (ABC)トランスポーターであるP-糖蛋白質とbreast cancer resistance protein (BCRP)が主に関与し,これら蛋白発現量が低い患者の場合,胆汁への輸送能力が低下し,血中イマチニブ濃度は高くなると考えられる。このBCRP (ABCG2)には蛋白発現量が約半分に低下する遺伝子変異421C>Aが日本人で約32%報告されている。このABCG2遺伝子421Aアレルに変異している患者において,イマチニブC0値が高く推移する傾向にある31~33)。一方でイマチニブの体内動態に及ぼすABCB1遺伝子多型(1236C>T,2677G>T/A,3435C>T)の影響は報告間で異なり,現在のところ明確な結果は得られていない34~37)
 さらにイマチニブはorganic cation transporter 1 (OCT1)の基質である。OCT1 (SLC22A1)はがん細胞上に限らず,肝細胞にも存在し薬物の肝細胞への取り込みに関与している38)。個々の患者のトランスポーター活性の違いによってイマチニブの肝細胞への取り込みが異なるが,現在のところ決定的なSLC22A1遺伝子多型は知られていない31, 36)

5.TDMを用いた治療戦略

 イマチニブ服用開始後は,定期的な血中濃度測定が望まれる。血中濃度を用いた治療ストラテジーをFig.3に示した。
 イマチニブC0値が1,000ng/ml以上を推移しているのにも関わらず,十分な治療効果が得られない場合,他のTKIニロチニブやダサチニブへの変更を考慮する。また浮腫や皮疹など忍容できない副作用が発現し,且つ1,000ng/ml以上のC0値を示した場合,一時休薬後に100mg減量して投与を再開し,1週間後の定常状態時に再度C0値を測定し,その後1,000ng/mlをターゲットに徐々に増量し,再び副作用で減量を要する場合には第二世代TKIに変更を考慮すべきと考える。
 一方で,イマチニブ服用で忍容できない副作用が発現し,且つC0値が1,000ng/ml以下の場合は,他のTKIへ変更し,さらに十分な投与量であるにも関わらず1,000ng/ml以下のC0値を示し,且つ十分な治療効果が得られない場合,まず服薬コンプライアンスを確認し,100mg増量,その後血中濃度を測定する必要があると考える(Fig.3)。
 ELN2009の判定基準に従って,イマチニブ服用開始後12ヵ月,18ヵ月時点でのCCyRやMMRの達成の有無によってsuboptimal responseあるいはfailureと判定し,主治医はそこで次なる治療戦略を考える。一方で改訂ELN2013では,イマチニブ服用開始後3ヵ月,6ヵ月時点でのBCR-ABL mRNA比(international scale)が,それぞれ10%以下,1%以下と,早期のmolecular responseの達成が新たな判定基準になる可能性がある。従来の受け身的な治療に対し,今後はTDMを用いた攻めの治療を用いることで,より早期にmolecular responseを到達できると考えられ,TDM実施によるベネフィットは大きい。

6.血中濃度測定方法

 現在,イマチニブのTDMによって特定薬剤治療管理料が月1回算定できるが,イマチニブ投与開始の初回月は,目的とするイマチニブC0値を得るために頻回に測定を実施することがある。その際,470点に280点が加算できる。初回の算定から4ヵ月目以降は470点の100分の50に相当する235点の算定となり,血中濃度測定を外部に委託している施設においては,ときに所定点数以上の費用が発生することがあるので注意が必要である。
 イマチニブの測定方法の国際基準はBakhtiar等39)による液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法(LC/MS/MS)を用いた方法である。一方でこの国際基準方法で測定したときと同じ血中濃度結果が得られる高速液体クロマトグラフィ(HPLC)法もある40)。現在のところ簡便なキット製剤は市販されておらず,LC/MS/MSかHPLCの方法で分析することで保険請求できるが,HPLC法がより簡便かつ低コストで測定できるため,比較的多くの施設で利用されている。
 Table5にこれまで報告されているHPLC法をまとめた41~49)。血漿量(plasma volume)は可能な限り少ないほうが患者負担は少なくて済み,実臨床においては一般に100~200μlを用いて定量されている。Table3に示したようにイマチニブ400mg服用時,その血中濃度は109~4,980ng/mlの範囲内であることから,この範囲内での検量線(calibration curve)の作成が必要である。血漿からのイマチニブの抽出は,血漿に有機溶媒などを加えてイマチニブを抽出する液体-液体抽出法(liquid-liquid extraction,LLE)と,シリカゲルなどを用いて血漿からイマチニブのみを抽出する固相抽出法(solid-phase extraction,SPE)がある。
 代謝物であるN-脱メチルイマチニブ(CGP74588)は,イマチニブの血中濃度の約17%の生成量を示し50)in vitro実験においてイマチニブと同程度にc-Ablやc-Kitチロシンキナーゼ活性を阻害することが知られている20)。これまでのところイマチニブC0値1,000ng/mlを指標としたTDMがされており,CGP74588の生成量は考慮されていない。イマチニブとCGP74588の同時定量方法が,薬物相互作用などを評価する上で有用かもしれない。

7.第二世代 TKIに対するTDMの可能性

 ニロチニブは,消化管吸収率が約30%と極めて低いが初回通過効果をほとんど受けないため,そのバイオアベイラビリティーは消化管吸収率がそのまま反映され,約30%である。このニロチニブの消化管からの吸収には胆汁が必要であり,体外への胆汁ドレナージによってニロチニブの吸収は著しく低下する51)。さらにニロチニブは食事の影響を受けやすく,高脂肪食摂取時,血中濃度‐時間曲線下面積(AUC)は空腹時に比べて1.82倍上昇する。このためニロチニブの血中濃度の個体間変動はイマチニブよりも大きいと考えられる。一方,ダサチニブのヒトでの絶対的バイオアベイラビリティーは報告されておらず,イヌ,サルなどで約14~34%であることが報告されている。食事の影響は比較的少ないが,相対的バイオアベイラビリティーの個体間変動は32%と大きい52)
 ニロチニブやダサチニブのBCR-ABLに対する活性は,それぞれイマチニブに対して約30倍,約100倍強いが,体内動態における個体間変動や併用薬剤との相互作用によって,実際には体内に吸収されてない場合や,逆に治療域を超えた血中TKI濃度がBCR-ABL以外のオフターゲットに作用し,副作用の発現に関与している可能性がある。これらの背景から,第二世代TKIはイマチニブ療法以上にTDMが必要な薬剤であると考えられる。TDMが日常診療においてすべての患者に最高の治療効果をもたらす個別化医療の1つになる可能性が高いことから,今後,第二世代TKI療法に関する知見の集積と,TDMのための第二世代TKIの治療域の確立が望まれる。

7.1 ニロチニブTDM
 ENESTndスタディにおいて,ニロチニブ300mgあるいは400mgを1日2回,12ヵ月間服用した時のニロチニブ血清C0値とMMR達成率は相関しない53)。さらにイマチニブ抵抗性・不耐容でニロチニブ治療を行った第I相,第II相試験においても,MMR達成率(12ヵ月時点)とニロチニブ血清C0値(ただし,この値は投与開始1ヵ月以内の値を用いている)との間に相関はみられない54)。しかしニロチニブ血清C0値500ng/ml以下の患者の平均MMR到達時間は31ヵ月と,500ng/ml以上の患者の平均到達時間24ヵ月に比べて有意に長く54),ある程度の血中濃度を維持することで,より早くMMRに到達できると考えられる。一方で我々はイマチニブ抵抗性・不耐容患者を対象とした東日本の多施設共同臨床試験(EJCML)の中間解析において,ニロチニブのC0値761ng/ml以上にすることで,感度76.2%,特異度77.8%でMMRに到達できることを報告している55)。今後,イマチニブのように多くのエビデンスの構築が必要であるが,ニロチニブも血中濃度を用いたマネジメントの有用性が期待できる。

7.2 ダサチニブTDM
 ダサチニブC0値3nM以上であると胸水が出現しやすいという学会報告がある。イマチニブやニロチニブに比べ,ダサチニブC0値は通常1ng/ml以下と低い。そのため多くの施設で所有しているHPLCではダサチニブC0値を十分に定量できない。LC/MS/MSを用いてダサチニブの定量を受託している会社もあり,これを利用して今後,ダサチニブC0値を用いた臨床評価のエビデンスの構築が求められる。
 我々はHPLCでも評価可能な血中濃度測定ストラテジーの開発を試みている。ダサチニブの血中濃度-時間曲線下面積(AUC)と最も相関する血中濃度はダサチニブ投与後2時間の血中濃度(C2)であった56)。診察時に患者にダサチニブを服用して頂き,2時間後に採血,C2値を用いたTDMを実施することで,C0値を用いた場合より服薬時間-採血時間の差が正確となる。C2値を用いて評価項目は2点挙げられる。
 まず1点目は薬物相互作用の有無の確認である。ダサチニブはH2ブロッカーやプロトンポンプ阻害剤などの胃酸分泌抑制剤と薬物相互作用を起こし,血中濃度が低下する56)。そのため胃酸分泌抑制剤と併用の際は,C2値をモニタリングし,十分な投与量であるのにも関わらず血中濃度が低い場合,胃酸分泌抑制剤の併用を中止することも一手段として考慮すべきと考える。ダサチニブ50mg錠は1錠9,214円であり,C2値をモニタリングすることで,この医薬品費を無駄にしない効率的医療を行うことができる。
 もう1点は,ある一定以上のダサチニブC2値の確認である。ダサチニブ投与中にBCR-ABL遺伝子の点突然変異がおき,感受性が低下することがある。特にT315I点突然変異が認められた患者に対して,ダサチニブは無効である。
 ダサチニブ投与開始後にT315I点突然変異が認められたフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病患者の背景をレトロスペクティブに調査したところ,T315I変異患者のダサチニブC2値は有意に低く,50ng/ml以下であった57)。ダサチニブ療法において,T315Iのような耐性ができる前に短期間に完全寛解まで到達させるために,ダサチニブC2値をモニタリングし,50ng/ml以上の血中ピーク濃度で白血病細胞の増殖力を抑える必要があるかもしれない。ダサチニブの半減期は3~5時間と短いため1日2回の投与が必要であるが,その用法では胸水などの副作用発現頻度が有意に増える。1日1回の投与で,ある一定ピーク濃度以上のダサチニブを短時間に確実に体内に入れることが,ダサチニブ治療において有効と考える。

8.おわりに

 イマチニブをはじめとするTKIのTDMは個別化療法(オーダーメイド医療)の1つであり,有効性および安全性の向上に直結する治療ストラテジーとなり得る。さらにTDMを用いた効率的医療を行うことより,医薬品費削減に貢献でき,患者のみならず医療経済的にもベネフィットをもたらすと考える。本邦においては多くの施設においてHPLC法を用いて血中濃度を測定し得る環境があり,薬学と医学の協調で世界に先駆けた治療ストラテジーを開発し,日常診療に応用できる力があると信じる。日本からの積極的なエビデンスの発信が今後の課題である。
 著者のCOI(conflicts of interest)開示:千葉滋;研究費・助成金(財団法人安田記念医学財団),寄付金(昭和発酵キリン株式会社)

文  献

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1秋田大学医学部附属病院 薬剤部
2秋田大学医学部血液腎臓膠原病内科

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