演題情報

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開催回
第62回・2017年・横浜
 

エボラ出血熱と透析治療

演題番号 : WS-03-3

倭 正也:1

1:りんくう総合医療センター感染症センター

 

【はじめに】2013 年末に始まった西アフリカにおける過去最大のエボラ出血熱(EVD)の流行により,欧米においても27 名のEVD 患者の治療が行われた.致死率は18.5%と西アフリカからの報告による31%~74%に比べて低いことから支持療法の重要性が明らかとなった.また,欧米の27 例中の9 例に乏尿が認められ,その中でも無尿を呈した5 例(米国3 例,ドイツ2 例:生存2 例)に対して持続的腎代替療法 (CRRT)が行われた.また,イタリアの非政府組織もシエラレオネにおいて21 名のEVD 患者にCRRT を施行している(生存2 例).わが国においては厚生労働省の一類感染症の治療に関する専門家会議において,RRT については致命率の高さ,患者の容態および医療従事者への感染リスクに留意したうえで実施するべきであるとされている.
【方法】EVD 患者に対してRRT を安全に施行するには,まず第1 に,患者の安全を保つことが重要である.高度に隔離された環境において複雑なRRT を施行することには困難さが伴う.第2 に,医療従事者の安全性を保護することである.個人防護具はfull PPE を着用し,感染性のある血液・体液曝露のリスクを最小限にすること,さらにRRT を施行するスタッフの数を最小限にすることである.最後に,コミュニテイの安全を保つことが必要である.感染性のある使用後の透析膜,透析回路,廃液などのエボラウイルスに汚染された物質に伴うリスクが生じる.エボラウイルスは,直径80nm,長さ800 ~1000nm の細長い構造をしたRNA ウイルスであり,血液中ではしばしば長い複雑な分岐構造をしている.分子量は4200kD であり,高透水性,高性能のヘモフィルターでは分子量60 ~70kD 以上の物質は理論上は通過できない.実際,米国からの報告によるとCRRT 廃液中にはエボラウイルスは検出されていない.しかし,フィルターからのリークの可能性も考慮して感染リスクの伴うものとして処理されることが望ましい.
【おわりに】高度に隔離された環境にてfull PPE 装着下でのRRT 施行には注意深い感染対策が必要である.当院などの特定感染症指定医療機関が次のアウトブレイクに対してRRT 施行を含めた備えをしっかり行っていくことが,今後のEVD などの一類感染症治療における重要な課題である.

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