演題情報

シンポジウム

開催回
第62回・2017年・横浜
 

先行的腎移植の現況と展望

演題番号 : SY-04-4

原田 浩:1、和田 吉生:1、福澤 信之:1

1:市立札幌病院腎臓移植外科

 

腎移植(KT)は最良の腎代替療法(RRT)である.なかでも透析療法(DT)を経ない先行的腎移植(preemptive kidney transplantation,PEKT)は,短期間DT であってもその後のKT(KTAD)と比べ,移植腎生着,生命予後が良好であると,前世紀の米国の大規模スタディが証明した.わが国,当施設でも,今世紀に入ってもPEKT はKTAD に比べ生着率は良好である.ただ2-3 年の短期間であればDTは,その後のKT には影響はないとされている.とくにDT の質の良好なわが国では尚更である.しかしPEKT にはその他にも種々の優位性がある.心血管系合併症の発症の軽減,透析アクセスの作成の回避,DT 中のアクセストラブルなどの有害事象や,食事制限,通院治療にともなう時間的制約,小児であれば身体および精神的発達面,女性であれば妊娠・出産面,さらに医療経済的側面など枚挙に暇がない.わが国のPEKT 件数は年々増加の一途を辿り,2015 年の全国集計では,生体腎移植1462 件のうち透析の有無の記載のあった1159 件中,PEKT は391(26.7%)件と1/4 を占めていた.中には50%を越えている施設もある.当施設でも2016 年は献腎移植3例を除いた生体腎移植37 件中,PEKT は22(59.4%)件であった.PEKT には早期の腎移植施設への受診が必要条件である.遅くとも透析アクセスを作成する前の受診が不可欠であり,尿毒症症状を呈してからの受診では残念ながらPEKT はまず叶わない.CKDG3b での受診が理想である.よって,保存期から腎移植もRRT の1モダリティとする生涯治療設計を患者およびその家族と共有し,遅滞のないよう準備を進めていただきたい.がん検診,冠動脈疾患など術前に治療が必要な疾病の治療,最近増加している肥満の改善には意外と時間を要する.今回の参加者の多くは透析施設医師並びにスタッフであり,保存期腎不全期の診療を担当している方は必ずしも多くないかもしれない.さらに,各透析患者に対して一度は腎移植のオプション提示をしていただいているものと思われる.かつて移植を諦めた方でも,移植医療技術及びCKD併存症の治療の進歩,生活環境の変化により生体腎ドナー希望者が新たに存在するかもしれない.腎移植医療全体も含めたPEKT の現況および展望につき概説する.

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