演題情報

教育講演 ベーシック

開催回
第62回・2017年・横浜
 

透析患者における末梢動脈病変の特徴と治療アプローチ

演題番号 : ELB-18-2

佐藤 紀:1

1:埼玉医科大学総合医療センター血管外科

 

我が国における慢性透析患者は年々増加を続け,現在では30 万人を越えるまでになっている.周知の如く,腎不全は末梢動脈疾患(PAD)の重要な危険因子であり,透析患者の25-30% ほどにPAD が存在すると言われている.現在我々の施設に入院するPAD 患者の約1/3 が慢性透析を受けている患者である.また慢性透析導入の原因疾患は糖尿病性腎症が最多であり,透析患者のPAD は腎不全患者に特有の病態に加え,糖尿病性動脈硬化症の特徴を併せ持つこととなる.すなわち,糖尿病性動脈硬化症の特徴として病変の主座は下腿から足関節部にかけてが中心となり,また慢性透析患者の約40% に見られる動脈中膜の石灰化はしばしばきわめて高度に及ぶ.石灰化による動脈の拡張性の喪失は,閉塞部を迂回する動脈の拡張が期待できないことから側副血行路の発達を著しく妨げることとなり,非透析患者に通常見られるようなpathology-symptom relationship の破綻をもたらしている.すなわち,通常なら病変から予測される症状が実際の症状と乖離していることがしばしば観察されるため,血行再建戦略を立てるうえで勘案すべき点である.また動脈の柔軟性の喪失は血行再建の技術的困難さをもたらすとともに,術後の血管床の拡大も不充分となりがちであり,このため非透析患者においては下腿3 分枝の1 本に血行再建を行えば足部の血流は回復するのに対比して,透析患者では術後の末梢の血流の増加も不充分になりがちである.血行再建の技術的な面では,術者が自ら綿密な血管の超音波検査を行い,動脈の性状を予測し,またバイパス材料となる静脈の状態を把握することが不可欠である.透析患者は冠動脈,脳動脈などに多くの合併症を抱えていることが多く,全身状態が不良のことも多いため,適宜手術を血管内治療と組み合わせることにより侵襲の軽減を図ることも重要であり,治療方策は可能な限りの多くの選択肢の中から,病変や患者の状態により選択すべきである.

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