演題情報

教育講演 ベーシック

開催回
第62回・2017年・横浜
 

血液透析療法における抗凝固法の基礎

演題番号 : ELB-16-1

鳴海 敏行:1

1:埼玉医科大学病院臨床工学部

 

血液透析療法に伴う体外循環では,血液が血液回路や透析膜など血管内皮細胞以外の異物と接触することにより,第「X」「I」「I」因子の活性化を介して内因系の凝固反応が進行する.同時に血小板も活性化され粘着・凝集反応が生じる.そのため,血液透析療法施行には抗凝固薬の使用が必須となる.現在,血液透析時の体外循環用抗凝固薬として認可されている薬剤は非分画ヘパリン(UH),低分子量ヘパリン(LMWH),ナファモスタットメシル酸塩(NM),アルガトロバンのみである.最もよく使用されるのがUH であるが,出血性疾患や手術後など,出血性合併症が危惧される場合は,LMWH やNM が選択される.以下に各種抗凝固薬の特徴を示す.
1)UH:AT「I」「I」「I」と複合体を形成し,凝固因子の「X」「a」とトロンビンの活性を阻害することで凝固時間を延長させる.半減期は約1 〜1.5 時間である.
2)LMWH:UH を分画処理した製剤で,抗トロンビン作用が弱く,軽度の出血合併症を有する場合に使用される.分子量分布は各製剤で異なり,性質や作用も異なるため,それらを考慮する必要がある.半減期は約2 〜3 時間である.
3)NM:蛋白分解酵素阻害薬であり,トロンビンや血液凝固因子を多段階で抑制し,血小板凝集も抑制する.半減期が約5 〜8 分と短く,透析で除去されるため,体外循環回路内のみに作用する.出血傾向や手術後の場合に使用される.
4)アルガトロバン:選択的抗トロンビン製剤であり,半減期は15~30 分である.AT「I」「I」「I」欠乏症例で,UH では体外循環回路内の凝固が改善しない症例に保険適用が認められている.また,HIT 症例に対しても適応となっている.
血液透析療法時の抗凝固薬に求められることは,種々の生体反応などが少ないこと,即効性ですみやかに失活化し,投与量決定が簡便であることなどが挙げられる.また,慢性腎不全では,血小板と内皮細胞の機能不全のため,出血傾向であると同時に過凝固状態であることが知られている.そのため,体外循環実施時の患者自身の血液凝固・線溶系の状態を考慮したうえで,抗凝固薬の種類と量が適切であるか否かを判断する必要がある.本教育講演では,血液凝固のメカニズム,抗凝固薬の種類・特徴などについて解説する.

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