教育講演 ベーシック
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腎移植の現況と将来の展望~臨床編~ 演題番号 : ELB-13-2 安藤 哲郎:1、中島 一朗:2、渕之上 昌平:2 1:日高病院人工透析・移植外科、2:東京女子医科大学腎臓外科
免疫抑制剤の進歩,そして医療者従事者の努力とあわせ腎移植手術の成績は年々向上してきている.免疫学的ハイリスク症例,特に血液型不適合移植手術の成績向上が顕著であり,それに伴って夫婦間の腎移植件数が増加してきた.これには生体腎ドナーにおける低侵襲手術の発展・普及も大きく関与していると考えられる.また維持透析を経験しない,いわゆる先行的腎移植が一般化してきた.そしてこれらの先端技術は大学病院を中心に地方,民間病院にまで普及しつつある.腎移植医療の最前線の現状は,一世代前の印象からは想像できないほど進歩しているといえるだろう.
本邦における腎移植症例数は生体腎移植を中心に徐々に増加してきている.ただ,移植先進国と比較すると,生体・献腎移植数ともにまだ少ない状況である.特に献腎移植は改正臓器移植法施行後も,臓器提供者数の大幅な増加にはつながっていない.ここには日本人の死生観など大きな問題があると考えられ,献腎移植医療の普及と提供数の増加にはまだ時間が必要と考える. 進歩した腎移植医療であるが,腎不全治療のひとつの柱として,誰でも抵抗なく検討・選択できるまでには至っていないのが実情である.この改善のためには,移植医療の正確な知識を腎臓病患者のみならず,一般市民,さらには医療従事者に知っていただく啓蒙活動が肝要である.そしてこの活動は,三者それぞれ異なるアプローチの必要があるとも感じている.これらの活動こそが,本邦における腎移植そして腎臓病治療の発展のために最も重要であるとわれわれは考えている. ここでは広くすべての人々に知って欲しい正確な腎移植の知識を,画像とあわせて述べるとともに,われわれ民間病院における移植医療普及の実際の取り組みについて報告する. |
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