演題情報

教育講演 ベーシック

開催回
第62回・2017年・横浜
 

腎移植の現状と将来の展望~臨床から注目される基礎領域~

演題番号 : ELB-13-1

八木澤 隆:1

1:自治医科大学腎泌尿器外科学講座腎臓外科学部門

 

新しい免疫抑制療法,免疫寛容の導入,異種移植,再生医療による腎臓作製など今後の進展が期待される腎移植領域の基礎研究を概観する.
移植医療の発展は移植免疫の解明に基づく免疫抑制薬の開発によってもたらされたと言ってよい.中でもカルシニューリン阻害薬の開発は移植成績を向上させ,この医療の普及に貢献した.代謝拮抗薬ミコフェノール酸モフェチル,抗体製剤バジリキシマブ,リツキシマブ,サイモグロブリンも移植臨床に必須の薬剤となっている.最近ではm-TOR 阻害薬も臨床で使用されている.そして,現在,継続的に研究が進められ,注目されているのが制御性T 細胞の臨床への応用である.
一方,免疫抑制薬の副作用はQOL の低下,また感染症や悪性腫瘍の発生のリスクともなっている.これを解消できるのが免疫寛容の導入である.移植臓器に対してのみ免疫反応を起こさず,他の異物に対しては反応する状態を免疫寛容と称するが,マウスを用いた基礎実験から進展し,現在はヒトにおける臨床も開始されて成果が挙げられつつある.ドナー骨髄をレシピエントに移植し,血液混合キメラを作ることによって寛容を誘導する方法が最も有望視されている.
提供腎不足を解消する一法として遺伝子改変ブタの腎臓を用いる異種移植の研究も進められている.ブタ腎臓を脱細胞化し,ヒト内皮細胞や上皮細胞を潅流し,再配置する手法による腎臓作製(ハイブリッド腎)も試みられている.
ウシやブタの胎児の腎臓形成部位にヒト幹細胞を注入し,再生腎臓を作製する研究も注目される.移植に際してウシやブタ由来の細胞を消去し,ヒト化する方法も同時に進められている.さらにヒト腎臓の芽を移植し(臓器の芽の移植),体内で育てる研究など様々な試みが進行中である.

前へ戻る