演題情報

教育講演 ベーシック

開催回
第62回・2017年・横浜
 

透析患者の認知症治療

演題番号 : ELB-08-2

荒木 信夫:1

1:埼玉医科大学神経内科

 

透析患者における認知症の治療と管理は,高齢者が増加し認知症患者が増えている状況において,透析医療における重要な課題と考えられる.透析患者における認知症の治療としては,非薬物療法とともに薬物療法が行われている.透析患者の認知症の中核症状に対して用いられる薬物としては,まずコリンエステラーゼ阻害薬があげられる.この代表薬として,塩酸ドネペジルがあげられる.同剤は選択的アセチルコリンエステラーゼ阻害作用を有する薬剤で,脳内アセチルコリン量を増加させることにより,認知機能を改善する.本剤は主に腎排泄性であるため,薬物動態の検討がなされた.Tiseo らによると,クレアチニンクリアランスが30ml/min 以下の腎障害と健常人での比較では,Cmax は各々7.7±1.2ng/ml, 8.3±3.2ng/ml であり,t1/2 は各々86.7±23.3h, 91.3±40.9h であり,両群間には有意差はなかった.そのため,透析患者においても同じ量の塩酸ドネぺジルを投与しているが,特に問題は起きていない.現在,認知症患者に対しては,上記のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤以外の薬剤として,メマンチンが使われている.メマンチンはNMDA 受容体の活性化を抑制し,Ca2+流入が続くことによるシナプス後膜の活動電位にノイズが生じることを抑制し,シグナル伝達効率を正常化する.本剤は認知機能障害の悪化を有意に抑制する以外に行動障害や攻撃性などの周辺症状(BPSD)の抑制も認められている.本剤も主に腎排泄性であるため,薬物動態の検討がなされた.Moritoyo らによる検討では,クレアチニンクリアランスが30ml/min 以下の腎障害と健常人での比較では,Cmax は各々15.83ng/ml, 12.66ng/ml であり,t1/2 は各々124.31h, 61.15h であった.そのため,腎機能障害患者では投与量を半量にすることが推奨されている.堀川によると,周辺症状のうち,焦燥・不穏が強いときには一時的に第二世代抗精神病薬を併用する.そのほかに,抑うつ症状にはSSRI,精神病症状には第二世代抗精神病薬を使用することができる.使用を避けるべき薬物は,第一世代抗精神病薬と三環系抗うつ薬,そして腎排泄性の薬物(ベンザミド系抗精神病薬など)である.

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