演題情報

教育講演 ベーシック

開催回
第62回・2017年・横浜
 

腎不全における尿細管間質の変化と水・Na代謝について

演題番号 : ELB-03-1

清水 泰輔:1、河合 雄一郎:1、武藤 誠:1、長谷川 元:2

1:埼玉県立循環器呼吸器病センター循環器内科、2:埼玉医科大学総合医療センター腎・高血圧内科

 

尿生成を行い排泄,再吸収によって水・電解質の恒常性維持を司るのが腎臓の役割であり,腎不全は恒常性維持の破綻によって電解質異常をきたす最も一般的な病態である.
急激な虚血を来すような急性腎障害では,腎髄質外層に位置する近位尿細管直部やHenle ループ上行脚おいて活発な電解質輸送が行われているにも関わらず,多くのエネルギー需要を必要とするため,低灌流によって尿細管の器質的障害を起こし代償する猶予なく恒常性維持の破綻が生じる.尿細管塩分代謝において尿細管管腔側のNa 取りこみ経路であるNa-H 交換輸送体 (NHE-3),Na-K-2Cl 共輸送体 (NKCC),上皮性 Na チャネル (ENaC)などの遺伝子発現の低下や,酸素供給の減少に伴うATP 欠乏がNa-K ATPase の発現に影響し,Na 再吸収量の低下,塩分排泄率の上昇を呈する.
一方,慢性腎臓病では緩徐に進展し,機能ネフロン数の減少に伴って,単一ネフロンあたりの糸球体濾過量を増加させ,尿細管では同様に各ネフロンあたりの分泌や再吸収を亢進させる.残存ネフロン近位尿細管のNa 依存性塩分輸送分子や血管側のNa-K ATPase の発現は変化していないため,全体として塩分排泄率が上昇するが,ヘンレループ以遠では残存フロンの塩分輸送分子発現は増加し,相対的に遠位側での塩分再吸収が亢進する特徴がある.
また尿細管水再吸収において,急性及び慢性に関わらず,Na などの溶質負荷量増大に伴う浸透圧利尿と髄質浸透圧勾配の形成・維持の阻害による尿濃縮力の低下,抗利尿ホルモンへの応答性低下等が関与する.このため利尿がある場合は脱水に陥りやすい特徴がある.また残存ネフロンが10% 未満もしくは糸球体濾過量が極端に低下した場合は自由水排泄低下により希釈性低Na 血症を呈することがある.
腎不全患者の水・塩分管理に当たっては尿細管機能の変化を正しく認識することが重要と考え,本講演においては適切な輸液療法にむけて腎不全における尿細管水・塩分代謝を中心に解説し,一部,間質障害時における電解質異常(Mg 代謝)について触れることとする.

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