演題情報

教育講演

開催回
第62回・2017年・横浜
 

材料工学における新たな生体適合性の概念

演題番号 : EL-12

田中 賢:1

1:九州大学先導物質化学研究所

 

透析膜の性能向上のためには,選択的な物質分離性能の他に血液中の血漿タンパク質や血球細胞に対して相互作用が小さい性質を有する高分子材料の開発がポイントとなる.また,次世代の透析治療の発展のためには,安全で副作用のない新規生体適合性高分子材料を用いたタンパク質の吸着・脱離と細胞の接着と機能の制御技術の開発がきわめて重要である.我々は,これまでに開発してきた生体適合性に優れている高分子材料の機能発現機構の解明に取り組んできた.Poly (2-methoxyethyl acrylate)(PMEA)は優れた生体適合性を有し,医療用のコーティング材として製品化されている.PMEA が生体適合性を発現するメカニズムの解明を目指した研究を進めた結果,生体適合性を発現する材料に共通して観察される特殊な水和構造が生体適合性発現において重要な役割を果たしていることを明らかにしてきた.一般的な高分子材料に水を含ませると,運動性が高く自由に動き回る自由水と,高分子に強く結合する不凍水に分かれる.さらに,高分子材料の種類によっては,自由水と不凍水の中間の性質を示す中間水が出現する.本教育講演では,高分子に結合した水の構造・運動性の評価法および高分子中の水の状態,とりわけ中間水が透析膜の性能発現に不可欠な生体適合性に与える影響について解説する.中間水は,高い分子運動性を有する高分子鎖に弱く束縛され,低温下でも分子運動性の高い水であり,高分子表面にも安定に存在することが示された.また,中間水は,天然高分子と生体適合性合成高分子に共通点して観測されることがわかった.さらに,高分子の化学構造を制御することで,中間水量を変化できること,中間水の量を制御することで血液中のタンパク質の吸着や細胞の接着が制御できることが明らかになった.高分子材料の含水状態の物性の一つである水和構造と運動性に着目した生体適合性の発現機構と生体適合性材料の設計概念について紹介する.参考文献 http://www.soft-material.jp/

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