演題情報

教育講演

開催回
第62回・2017年・横浜
 

透析医療と医療安全

演題番号 : EL-01

河野 龍太郎:1

1:自治医科大学医学部

 

血液浄化療法では血液を体外で循環させ,血液中の病因や関連した物質を除去するため,システム的に見ると患者の体の中にある臓器の一部が体外に出ている状態となる.そのため浄化装置の故障や回路のトラブルは患者の安全を直接脅かすものとなる.血液浄化療法中に血液回路のカテーテルが外れて失血した事例や,持続的血液透析濾過の際に誤って血漿交換用の血液浄化器を使用した事例などが報告されている.このタスクは,体液全体を浄化するため,老廃物が血液に移動するまでに時間を要し,また,透析量,除水量の水分管理が必要であり,医療の専門家がチームで対応することが多い.専門知識を持った複数の人間と,目的を達成するために開発・設計された機械で構成されているシステムをヒューマンマシンシステムという.透析医療はヒューマンマシンシステムである.ただし,航空や原子力発電システムなどと比較するとその構造は比較的シンプルである.しかし,透析医療におけるマシンは患者に接続されており,患者の持つ生理的,認知的,集団的特性により,医療者の意図するように完全に制御することは困難であるという特徴がある.このような特徴を持った透析医療システムのリスクを下げるためには,システムの持つ脆弱性を予想し事前に対策をとることや,発生した問題を解析して再発防止策をとることが重要である.報告されたヒヤリハット事例を見ると,医療者側の努力によりトラブルやリスクを低減できるものと,解決の困難なものに分けられる.医療者側の問題の多くはヒューマンエラーに起因するものが多い.リスク低減のためには,できることから実施するという具体的対策が重要であり,特に,ヒューマンエラー低減のためには,エラーは不注意で発生するという古典的な考え方ではなく,人間側の要因と環境側の要因の相互作用の結果であることを理解しなければならない.透析医療のような作業環境においては,ヒューマンエラーが発生した状況を科学的に分析し,理に適った対策をとらなければならない.講義ではヒューマンエラー発生メカニズムを,行動モデルを使って説明する.また,チームでの仕事を前提としてエラー対策を解説する.

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