演題情報

学会・委員会企画

開催回
第60回・2015年・横浜
 

電気生理学的数理解析に基づく補充液の心筋細胞拍動能におよぼす影響の評価

演題番号 : GI-09-6

濱田 浩幸:1

1:九州大学大学院農学研究院生命機能科学部門システム生物工学講座

 

【目的】電気生理学において心拍動能は洞調律と心筋組織の収縮力に基づき評価される。1細胞計測技術を用いた解析により、心筋細胞内Ca2+動態が拍動間隔と収縮力の形成(Ca2+ clockと興奮収縮連関)において重要な役割を果たすことが明らかにされた(DM. Bers, EG. Lakatta)。本研究では、血液透析患者の治療中の血清および間質液Ca2+動態が心筋細胞内Ca2+動態におよぼす影響の電気生理学的数理解析を実践し、慢性血液透析患者の心筋細胞の拍動能の変化とCa2+補充液の拍動能への影響を検証した。
【方法】透析液・血清・間質液・細胞内液から構成される4-compartment modelを用いて、正味の除水速度10mL/minを維持する4時間透析治療における体液量36Lの患者の心筋細胞の拍動リズム、筋小胞体と細胞質のCa2+濃度、細胞の収縮力の推移を解析した。なお、拍動リズムの形成機構には細胞内を筋小胞体と細胞質に区分した確率的数理モデル、興奮収縮連関の解析には収縮力と細胞質Ca2+濃度の関係の決定論的数理モデルを適用した。また、Ca2+補充液の濃度は2.5または3.5mEq/Lとし、これらを10mL/minで加えるものとした。
【結果および考察】血清および間質液Ca2+濃度の変化は血清Ca2+濃度の高い症例に低Ca2+濃度透析液(2.5mEq/L)を適用すると大きくなり、治療後の心筋細胞の拍動リズムは透析前に比して1.1%、収縮力は7.2%有意に低下した。次に、この拍動能の変化が大きい条件に焦点を絞り、返血に補充液を供給し、治療中の心筋細胞の拍動能を解析した。Ca2+濃度が2.5または3.5mEq/Lの補充液の適用により、それぞれ、拍動リズムは0.7%または0.6%、収縮力は4.6%または3.8%低下した。補充液によるCa2+の添加は、治療中の間質液Ca2+濃度の低下を緩和し、心筋細胞のNa/Ca exchangerによる細胞内Ca2+搬出量を減じた。その結果、細胞質Ca2+濃度の低下が軽減され、拍動リズムと収縮力の低下が緩和された。
【結論】Ca2+補充液の適用は治療中の心負荷軽減に有用であることが示唆された。

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