演題情報

学会・委員会企画

開催回
第60回・2015年・横浜
 

TGF−βおよびLAP陽性T細胞に対する選択吸着カラムの癌治療への応用

演題番号 : GI-09-1

寺本 和雄:1、遠藤 善裕:2、上田 祐二:3、小笠原 一誠:1

1:滋賀医科大学医学部病理学講座疾患制御病理学、2:滋賀医科大学臨床看護学講座、3:JR大阪鉄道病院

 

癌による年間死者数は30万人を超えており、新しい治療方法の開発が望まれる。癌患者の血液中には制御性蛋白質や制御性T細胞等が増加し、癌免疫低下を引き起こし、癌の増殖を助長していると考えられる。本カラムは癌治療への応用を目的とする。
従来、T細胞サブクラスの選択吸着材は知られていなかったが、多孔化したポリエステル繊維不織布をジエチレントリアミン化ポリスルホン誘導体で被覆したものが制御性T細胞の一種のLAP (TGF-β)を細胞表面に持つT細胞を選択的に吸着することを見いだした。この吸着材のカラムで癌細胞株KDH-8を背部皮下に接種して作成した担癌ラットを体外循環したところ、体外循環前後で、T細胞のLAP陽性率の減少が認められた。LAP陽性Tを除去することによって癌免疫が向上するかどうかを確認するためにラット脾細胞のKDH-8細胞に対するキラー活性を調べたところ、体外循環によってCTL活性が顕著に増加することが確認された。また、カラムに付着した細胞は、LAP陽性率が上昇しており、容量依存的に脾細胞のCTL活性を低下させることが確かめられた。 
さらに、体外循環による癌増殖阻止を確かめるため、担癌ラットの腫瘍塊を外科的に切除した後、当カラムで体外循環し、再度、KDH細胞を注射して、腫瘍の形成の有無を観察する実験を行なった。その結果、体外循環治療しなければ、全てのラットが20日で死亡したのに対し、体外循環治療した群では8匹中4匹が腫瘍生成無く生き残り、残りの2匹が40日以上生存した。臨床検体を用いるin vitro吸着試験においても癌性腹水からのTGF—βの吸着および末梢血からのLAP陽性T細胞の吸着が確認できた。 
生体内ではTGF-βはLAP-TGF—β複合体として存在しており、LAP分子はGARP分子のロイシン繰り返し構造に親和性が高いことが知られている。ジエチレントリアミン類似の約50種類のリガンドの吸着材を調製して吸着能を測定した結果、LAP分子はロイシンの構造に親和性が高いことが確認できた。

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