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第60回・2015年・横浜
 

超低体重猫の慢性腎臓病急性増悪に血液透析を適用した一症例

演題番号 : WS-09-8

安保 美乃里:1、宮本 賢治:2

1:あそう動物病院、2:日本小動物血液透析協会

 

【はじめに】
小動物臨床において血液透析の例は少なく、施設も限られている。特に慢性腎臓病の患者に関しては経済面やそれぞれの生命観から飼い主の同意が得られない場合が多い。
今回、慢性腎臓病の急性増悪を迎えた猫で血液透析を実施する機会を得たので報告する。
【症例】
13歳(人間では70歳前後)の雑種雌猫で、体重1.6kgである。8ヶ月前に左右腎結石と慢性腎臓病が確認され、食事療法を行っていた。6ヶ月前に尿管結石により左尿管閉塞をおこし、尿管ステント設置手術を行っている。
今回は1週間前より食欲不振、2日前より食欲廃絶を主訴に来院した。輸液療法を主体とした内科療法を実施したが窒素血症の改善が認められず、7病日目に血液透析を開始した。
【血液透析】
猫や小型犬の血液透析では、循環系の併発症を避けるために体外循環血液量を全血の10%以下にする。猫の血液量は約66ml/kgと人よりも少なく、今回の症例では全血液量を106ml推定した。透析導入期に使用する血液回路(20 ml)とダイアライザー(7 ml)の充填量合計が27 mlであるため、不足する17 mlを同居猫の血液で補充した。1回目の透析で返血時に不均衡症候群と見られる強直間代性痙攣が認められたため、2回目以降の透析ではECUM方式(血液はポンプで循環させながら、透析液を停止させる)を導入して時間処理血液量を減らし計4回の透析を行った。 ECUM方式を取り入れて以降は不均衡症候群は認められなかった。
BUNは、透析前の273mg/dlから最終的に20mg/dlまで低下した。
【考察】
今回の症例は尿素分布量が極端に小さいと考えられ、透析装置の最低ポンプ流量が10 ml/minのため、1回目の透析は尿素除去を確認しながら実施した。50分の透析でBUNは273 mg/dlから147 mg/dlと急激に低下し、返血時に強直間代性痙攣が認められた。この50分間のURRは0.46で、URR/hrに換算すると0.56となった。BUNの低下から生じる浸透圧の下降を計算すると45 mOsm/kg[(273-147)/2.8]となり、この浸透圧の急激な低下が痙攣の原因と考えられた。2回目以降は小動物透析協会の指導を仰ぎ、ECUM方式で透析を続行した。この方法は一見すると不経済に思えるが、小型の動物ではBUNの急激な低下を抑制し、しかも予測した尿素除去量が得られる安全な方法と考えられた。

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