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開催回
第60回・2015年・横浜
 

慢性腎不全高齢犬(15歳)の急性増悪に対する血液透析

演題番号 : WS-09-4

矢野 良佳:1、山根 哲也:2

1:ペット医療センター、2:PIC動物CTセンター

 

【症例】雑種犬、15歳、避妊雌、体重10.9㎏。慢性腎不全により1年前から活性炭とベナゼプリルの投薬および1~2週間毎の皮下点滴を行っていたが、元気食欲の低下と嘔吐を主訴に来院した。なお心雑音、慢性肝炎、甲状腺機能低下症も認め、加療していた。
【経過】CBCで貧血、白血球数の増加を認め、血液化学検査で顕著な高窒素血症(BUN 118㎎/㎗、Cre 6.3㎎/㎗)、肝酵素、NH3、Pの上昇、Kの低下を認めた。慢性腎不全の急性増悪と判断し静脈内点滴とフロセミドを中心に加療したが改善が認められず、無尿に陥ったため、血液透析を行った。
第9病日、全身麻酔下で右側頚静脈へ透析用にダブルルーメンカテーテルを留置、同時に胃瘻チューブを留置した。覚醒後、初回の透析を開始し、開始後1週間は第9、10、11、13、16病日で実施、その後は4~5日間隔で実施した。
透析以外に、透析回路からの静脈内点滴、酸素室療法、レーザー療法、エリスロポエチン製剤の投与、胃瘻チューブからの給餌などを実施した。貧血が悪化したため、第10病日に全血輸血(200ml)を実施した。
第9病日の血液検査でBUN 204 ㎎/㎗、Cre 17.6 ㎎/㎗だったが、第16病日の透析後にはBUN 17㎎/㎗、Cre 2.5㎎/㎗となった。全身状態も徐々に改善し、第11病日には排尿を認めた。その後も良好に経過していたが、第48病日から発咳、嘔吐回数が増加、第50病日に急激に呼吸状態が悪化し、斃死した。
【考察】本症例のような致死的状況に陥った慢性腎不全患者においても、血液透析の結果、高窒素血症や臨床症状が改善され、患者のQOLは良好に保たれた。剖検がなされていないため詳細な死因は不明だが、高窒素血症の推移などを考慮すると、腎不全よりも他の要因が複合的に悪化した可能性が考えられた。
獣医学領域においても、血液透析で慢性腎不全患者のQOLの長期維持は可能と考えられ、また一方で、長期の透析が必要な場合、通院下での透析実施、透析頻度などの点は検討する余地があると考えられた。

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