演題情報

教育講演

開催回
第60回・2015年・横浜
 

透析患者の心疾患 up to date

演題番号 : EL-03

長谷 弘記:1

1:東邦大学医療センター大橋病院腎臓内科

 

透析患者の死亡原因の30%以上が心疾患であり、心疾患の予防と治療が予後改善にとって最も重要であることは周知の事実である。そのためには、透析患者独特の心疾患、心疾患発症機序などの最新知識を学ぶことが必要である。
【心臓死】欧米での透析患者の死亡統計では、不整脈死を含む「心臓突然死(SCD)」が最も重要であるとされてきたのに対して、本学会統計では数十年に渡って心不全死が重要であるとしてきた。このギャップは本学会統計が始まった時期に「SCD」という概念が存在しなかったことに原因がある。この問題に対して冠動脈疾患(CAD)の既往を伴わないHD患者677名を対象とした心筋血流シンチグラフィを用いた3年間の観察研究では、心臓死と感染症死がほぼ同程度であり、心臓死ではSCDが最も高頻度であることが確認された。
【SCD発症機序】最も一般的な発症機序は、(1)急性冠症候群(ACS)発症に伴う不整脈死、(2)うっ血性心不全(CHF)に伴う不整脈死である。ACSの原因は冠動脈プラーク破裂であり、原因が冠動脈疾患であることは容易に理解できる。CHFの原因は必ずしも究明されてはいないが、陳旧性心筋梗塞や多枝病変による虚血性心筋症が多いことは非透析患者と同様である。透析患者で特有な病態は高血圧・高度貧血・FGF23亢進などを原因とする高度左室肥大の合併頻度が極めて高く、脂質代謝障害・血管石灰化などを原因とする大動脈剛性亢進の合併頻度も同程度に高いことである。一方、HD治療自体が原因となる場合も稀ではあるが存在する。HD前の高K血症、HD後の低K血症は致死的不整脈を惹起する。さらに、過剰体液や過剰除水は交感神経系を亢進することによって致死的不整脈を惹起する。
【CAD】CADは血管内皮傷害から始まるが、その修復過程で産生される骨髄由来血管内皮前駆細胞(EPC)の内皮下侵入による平滑筋変性と脂質貯留を主な原因とするプラーク形成・進展によって完成する。さらにEPCによる血管新生作用はプラークをさらに進展させるとともに、新生血管破裂はプラーク内出血を来してACS発症の重要な要因となる。
その他、CADに対するカテーテル治療の適応、大動脈狭窄症の現状と治療の選択などに関しても最近の知見を紹介する。

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