演題情報

会長講演

開催回
第60回・2015年・横浜
 

血管石灰化の病態と治療

演題番号 : PL

新田 孝作:1

1:東京女子医科大学第四内科

 

血管石灰化とは、骨組織以外の血管壁へのCa非生理的な沈着で、沈着部位によりさまざまな臓器障害をもたらし、透析患者の生命予後に影響を与える重要な因子と考えられている。透析患者における血管石灰化病変として、動脈硬化の進展によりプラーク内に認められる石灰化病変のほかに、中・小筋型動脈の中膜にみられるメンケベルグ型中膜石灰化がある。冠動脈などでは,これらの石灰化病変がしばしば混在し認められる。単純エックス線撮影は、血管や関節および軟部組織の石灰化の検出に有用である。大動脈や大腿動脈の石灰化は、胸部、腹部、骨盤部あるいは腰椎側面の単純エックス線にて評価する。我々は、心胸郭比を計測するための胸部単純X線写真から、大動脈弓部の石灰化率を判定する方法を報告した。CTスキャンは、血管石灰化の検出および定量化に有用である。腹部単純CTでは、大動脈石灰沈着の面積を、大動脈石灰化指数(ACI)で表して評価することが可能である。最近では、汎用性に優れたMDCTによる検出感度が向上し、空間分解能が改善して心臓の拍動や呼吸によるプレを軽減できるようになった。血管石灰化の予防や治療においては、Ca・P代謝の管理が最も重要である。2006年に出された日本透析医学会(JSDT)からの「二次性副甲状腺機能完進症治療ガイドライン」では,補正Ca値8.4~10.0mg/dL,P値3.5~6.0mg/dLを目標値として推奨している。血清P値のコントロールに関しては、食事からのP摂取制限と十分な透析によるP除去が基本である。しかし、透析によるP除去量は限られており、Ca非含有P吸着薬や少量のビタミンDの投与が必要となる。理想的には、P, Ca, intact PTHが目標値に達していることが望ましい。しかし、実際の臨床現場では、これらの不均衡がみられることが多い。薬物療法の変更を考える前に、食事療法と透析効率を再考すべきである。すでに進行している血管石灰化に対する配慮も必要である。ビスホスホネートは、原発性および続発性骨粗鬆症に有効性が確立している骨吸収阻害薬である。消化管での吸収率が低いために投与法に工夫を要するが、骨吸収のみならず、動脈や皮膚などの異所性石灰化を抑制する作用を有する。しかし、有効なビスホスホネートの種類、投与法および副作用の評価などに関して、今後のエビデンスの蓄積が必要である。また、Ca sensing receptorのagonistであるCalcimimeticsが開発され、異所性石灰化の治療薬として検証されつつある。

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