演題情報

ワークショップ

開催回
第59回・2014年・神戸
 

鉄補充療法の考え方

演題番号 : WS-01-1

濱野 高行:1

1:大阪大学大学院医学系研究科 腎疾患統合医療学

 

血清フェリチンが肝臓内の鉄含有量と比例すると剖検で初めて報告されたのはESAがほとんど使われていない時代である。肝臓内鉄過剰の症例においても骨髄での鉄欠乏が報告された(Lancet 1982)。つまり本質的に、腎性貧血は鉄の分布異常を伴う。これは、血管には石灰化病変としてCa/リンが多量にあっても、肝心の骨には十分存在しないCa/リン分布異常のMBDに例えるとわかりやすい。血管石灰化はPTXなどの激烈な介入をしないと退縮しないが、ESAの使用で肝臓内の鉄は末梢へ誘導される結果、比較的すみやかに減少することが報告されている。この現象は長時間作動型ESAがhepcidinを抑制することで説明されうる。その結果、ESA使用が通常治療の現代においては、刻々と変化するフェリチンは肝臓の鉄含有量を反映しないという臨床研究が複数出ている。低回転骨はCaを緩衝できない故に、Ca製剤を投与した時の血清Ca濃度の上昇度が大きく血管石灰化を招く。これを腎性貧血にあてはめれば、鉄投与後にフェリチンが上がらなければ、(あるいはESAによってフェリチンが低下すれば)、適度な鉄回転の存在が担保される。例えば担癌状態によってbaselineのフェリチンが高い時であっても、鉄剤投与後のフェリチン上昇度が低くHbが上昇すれば、鉄が有効利用されていることを示唆する。鉄は酸化ストレスを招くことが、8-OHdGの上昇などで報告された。しかし、鉄投与でTNF-αが低下する恩恵も報告されており、このようなsurrogate markerで鉄投与の是非を議論することは不毛である。またフェリチン高値が予後不良因子であるということで、フェリチン目標値を設定したり、鉄投与に理由を求めるのも疫学的観点から誤りである。フェリチンには炎症が影響しており、いかに多変量解析でCRPやAlbで補正しようとも残余交絡の影響は拭えないからである。ではどのような研究をGuideline作成上重視すべきか?それは、まずRCTである。心不全における鉄投与で自覚症状が改善し、NYHAが低下することが確認されたが、これはdarbepoietinのRED-HF研究と好対照である。そして、炎症や栄養によって影響されるフェリチンやTSATという暴露因子ではなく、直接的に鉄投与量(方法)とアウトカムとの関連を見る研究が望まれる。

前へ戻る