演題情報

シンポジウム

開催回
第59回・2014年・神戸
 

透析患者における筋力と筋肉量~運動療法の効用と限界~

演題番号 : SY-09-3

松嶋 哲哉:1

1:(医)才全会 賀茂クリニック

 

地上で活動する動物は等しく重力(1G)に影響を受け、我々ヒトの骨格筋も直接重力に影響を受ける抗重力筋と、そうではない非抗重力筋とに大別される。ベッドレストは重力の影響を最小限にし、抗重力筋に対して重力負荷を解除し、不活動状態をもたらすが、その結果、廃用性筋萎縮による筋力低下、筋持久力の低下、骨格筋の可塑性の消失に至る。遅れて、非抗重力筋にも同様に筋機能低下が生じる。ヒトの生理的機能は、重力に抵抗した直立行動を日常とする状態に適応したもので、それらの機能は筋の不使用状態をもたらす長期ベッドレストに強く影響を受ける。血液透析は断続的にせよ、ある意味、長期間の安静状態を創りだす治療であるが、筋力を含めた体力に治療自体が及ぼす影響に関して検討された研究は少なく、今後の超高齢透析社会における課題の一つであろうことは疑いない。今回われわれは、透析患者の安静と体力、さらには透析中のベッドレスト中のトレーニング効果に関する検討を行ったので報告する。トレーニングは、軽度~中等度の有酸素的仰臥位自転車運動トレーニングに動的レジスタンス運動が組み込まれたプログラムを透析中に約1時間実施した。結果は、筋肉量の減少を阻止することは困難であったが、筋力の維持効果は示された。心肺持久力に関しては改善が得られた。ベッドレストの先行研究では、筋萎縮に先立って筋力低下が起こっていることから、central command(中枢司令)の低下がまず起こり、更に脊髄運動神経細胞の活動が低下する事が背景にあると言われている。おそらく透析中の運動努力の持続が、筋の活動性を維持し、central commandの低下を阻止したためと考えられる。筋肉量の増大には、最大筋力に近い負荷での筋力トレーニングと蛋白摂取量増加の双方が不可欠と考えられる。一方で、運動負荷の増大による乳酸アシドーシスと蛋白摂取の増大による不揮発酸の増加により、呼吸や重炭酸による緩衝の限界を容易に越えて、透析患者が常に重篤なアシドーシスに置かれる可能性が心配される。その点で運動と栄養の相乗効果による筋肉量の改善は透析患者において困難となってくる。

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