演題情報

シンポジウム

開催回
第59回・2014年・神戸
 

透析患者におけるたんぱく質エネルギー消耗状態の評価と対策~特にmuscle wastingについて~

演題番号 : SY-09-1

熊谷 裕通:1、吉田 卓矢:1

1:静岡県立大学 臨床栄養学

 

2006年の国際会議において、透析患者のたんぱく質エネルギー栄養障害がたんぱく質エネルギー消耗状態(PEW)という名称で統一され、新しい診断基準が発表された。その診断基準には、筋肉量を中心とする体組成やその変化が取り入れられている。骨格筋は、人体で最大の蛋白質貯蔵庫で、かつエネルギー消費の中心的な役割を果たしており、その消耗はQOLの低下や予後に直結する。したがって、その量や機能を測定することは重要であるが、筋肉量は性によって大きく異なり、また加齢による低下が生じるので、個々の患者の筋肉量やその変化をどう測定し評価するかは難しい問題である。透析患者では臨床的に骨格筋量の指標として、DEXA法による四肢筋量、BIA法による除脂肪量、身体計測による上腕筋面積、透析前後の血中クレアチニン値からなどから算出する%クレアチニン産生速度が用いられるが、簡便性、測定の精度、基準値の設定などが問題となる。上記の診断基準には含まれないが、握力、下肢筋力、歩行能力、バランスなど骨格筋の機能的な評価も有用である。一方、筋肉の同化や異化の指標をサロゲートマーカーとして用いる方法も考えられ、特に異化の指標としてミオスタチン、ユビキチン・プロテアソーム、3メチルヒスチジンの血中濃度の測定、分岐鎖アミノ酸の動静脈血中濃度差などが候補して挙げられるが、いずれも未だ実験的な段階で臨床応用は時期尚早な状況である。
筋肉消耗への対策としては、食事療法、運動療法、薬物療法が挙げられる。食事療法では、エネルギーやタンパク質を十分摂取させるほか、分岐鎖アミノ酸を補給するのも効果的と考えられる。透析中には筋肉異化が亢進し、特に分岐鎖アミノ酸の出納が負となるので、透析中の補給が有効である可能性がある。運動療法では、有酸素運動よりレジスタンストレーニングのほうが骨格筋量や筋力の維持には重要とされる。薬物療法では、成長ホルモンの有効性が示されているほか、テストステロンや蛋白同化ホルモンも有効である可能性がある。 本シンポジウムでは、演者らが試みてきた筋肉消耗の評価の方法について、その妥当性や限界なども含めて述べる。

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