演題情報

シンポジウム

開催回
第59回・2014年・神戸
 

透析患者の認知機能障害と脳萎縮

演題番号 : SY-06-4

鶴屋 和彦:1、吉田 寿子:1、北園 孝成:2

1:九州大学 包括的腎不全治療学、2:九州大学 病態機能内科学

 

加齢とともに脳は萎縮するが,透析患者では,加齢で説明できない機序により脳萎縮が急速に進行することが明らかにされている.また,透析患者では認知機能障害の罹患率が高く,同年齢の健常人の2倍以上である.
透析患者の脳萎縮や認知機能障害の機序としては,血管性因子(vascular risk factor)として,高血圧,糖尿病,高脂血症,心筋梗塞,心房細動,喫煙など,非血管性因子(nonvascular risk factor)として貧血,甲状腺機能亢進症,アルミニウム,薬剤,睡眠障害,うつ病などが考えられている(Pereira AA, et al. Am J Kidney Dis, 2005).また, MRI-ASL(arterial spin labeling)法による脳血流量の測定では,透析患者の脳血流速度が健常人より緩徐であることが示され,その結果もたらされる酸素供給不足が脳萎縮,認知機能障害,脳卒中などに寄与している可能性が示唆されている(Prohovnik I, et al. J Cereb Blood Flow Metab, 2007).われわれのMRIによる検討においても,3年間の透析低血圧の総回数やラクナ梗塞数の増加度と,前頭葉の萎縮進行度との間に正の相関関係が認められ,脳血管性の機序が示唆された(Mizumasa T, et al. Nephron Clin Pract, 2003).
一方,透析患者における認知機能障害や脳萎縮の報告はほとんどが血液透析患者を対象に検討されており,血液透析患者と比較して血圧変動が少ない腹膜透析患者における検討はほとんどみられない.近年,statistical parametric mapping(SPM)を用いた脳MRI画像の解析により,脳灰白質容積は加齢とともに減少するが,白質容積は変化しないことが報告されている(Taki Y, et al.).そこでわれわれは,保存期慢性腎臓病患者と腹膜透析患者の脳MRI画像をSPMで解析し,両群における脳容積とその変化率について比較検討した.その結果,腹膜透析患者で有意に脳灰白質容積が小さく,2年間の変化率(脳灰白質容積減少率)も有意に大きかったことが確認された.この結果は,透析患者において,循環動態の変動に関係なく脳萎縮が進行することを示唆しており,高血圧自体や貧血,尿毒症性毒素などが関与している可能性が考えられた.今後,脳萎縮に寄与する因子の解明が重要と思われる.

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