演題情報

シンポジウム

開催回
第59回・2014年・神戸
 

iPS細胞を用いた腎細胞と腎組織の再生

演題番号 : SY-04-3

長船 健二:1

1:京都大学iPS細胞研究所 増殖分化機構研究部門

 

近年、無限の増殖能と全身の細胞種への多分化能を有するES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)から特定細胞種への分化誘導を行い、細胞移植によって機能不全からの臓器機能回復を図る再生医療の開発研究が盛んに行われている。しかし、神経や心筋など他の臓器の再生研究から大きく遅れ、ES細胞やiPS細胞から腎細胞を分化誘導する方法は未だに確立されていない。現在、演者らは、腎発生過程を再現し、ヒトiPS細胞から「中間中胚葉」、「腎前駆細胞」、「分化腎細胞」の順に多段階の腎細胞分化誘導法開発を行っている。そして、増殖因子の組み合わせ処理を用いて最初のステップであるヒトiPS細胞から中間中胚葉細胞を90%以上の高効率で分化誘導する方法を開発した。これらのヒトiPS細胞由来の中間中胚葉細胞は、in vitroとin vivoで成体腎構成細胞に分化可能であり、器官培養の系において三次元の尿細管様構造を形成する能力を有することが分かった(Mae S. et al., 2013)。一方、近年、化学と生物学を融合させた「ケミカルバイオロジー」と呼ばれる学問分野が発展し、合成化合物や生物由来の天然物の高速スクリーニングによって様々な生命現象を制御する化合物が同定されている。現在、演者らは化合物スクリーニングシステムを立ち上げ、ヒトiPS細胞から腎系譜への分化を誘導する化合物の探索も行っている。そして、ヒトiPS細胞から中間中胚葉を高効率に誘導する2種の化合物TTNPB, AM580を同定し、化合物を用いた低コストかつ高効率の分化誘導法を開発した(Araoka T. et al., 2014)。現在、次のステップとしての胎児期の腎前駆細胞を経て、成体腎を構成する分化腎細胞への高効率分化誘導法の開発、さらに腎組織の作製を目指した研究を行っている。本発表においては、ケミカルバイオロジーの活用をはじめとしてヒトiPS細胞から腎細胞を分化誘導する研究の成果について提示する。さらに、iPS細胞技術を用いた細胞療法および難治性疾患に対する新規疾患モデル作製、治療薬探索研究の展望についても述べてみたい。

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