演題情報

学会・委員会企画

開催回
第59回・2014年・神戸
 

疫学研究から見たJSDTガイドラインの妥当性と課題

演題番号 : GI-01-3

藤井 直彦:1、濱野 高行:2

1:ペンシルベニア大学 臨床疫学・生物学統計センター 臨床疫学部門、2:大阪大学大学院医学系研究科 腎疾患統合医療学寄附講座

 

エビデンスの中で最も質の高いものは、ランダム化比較試験(RCT)を体系的に集めて検討したメタアナリシスで、次いで個々のRCTがランキングされる。RCTという以上は何らかの医療介入が前提となる。例えば手術やがん治療のように、生死など、介入結果の成否がわかりやすい場合であれば、どの治療を選ぶべきか白黒つけやすいが、こと内科的疾患においては、そうした決定的なアウトカムに至るまでに長期間を要することが多い。そのため資金的に実現が困難であったり、外的要因の影響を受けずに計画通り遂行することが不可能であったりする。さらに倫理的に不適となる場合もあり、必ずしもRCTだけが最善策とはならない。
そこで最大限に利用されるのが観察研究のデータである。DOPPS研究は透析領域におけるその先駆けとも言え、これまでに様々なリサーチ・クエスチョンに対する「回答」をもたらしてきた。一方、日本透析医学会・統計調査委員会が毎年行っている調査も、近年わが国独自のデータを提供し、それを優先的に取り入れることで、JSDTガイドラインは海外のガイドラインには無い妥当性を担保している。また世界的にも適切なエビデンスが無いリサーチ・クエスチョンに対しては、エビデンスが無いことを認めた上で、現時点で最善と思われる判断を参考意見として示し、ベッドサイドでの実用にできるだけ耐えるように工夫されている点で評価するべきと思われる。
しかし、残念ながら質の悪いエビデンスをいくら集めてもそこから質の良い「回答」は得られない。観察研究で推測された結果が必ずしも介入研究で再現できるとは限らないのである。医療はそもそも介入行為にほかならず、観察研究を何らかの形で介入研究へと昇華させて初めて有意義なエビデンスが出来上がる。その点において世界一予後の良いわが国の透析患者の生命予後をアウトカムとするのは、諸外国に比べて分が悪いといえよう。直接生死には結びつかないが、QOLや予後を大幅に悪化させる、心血管イベントや骨折、感染症や悪性疾患といったアウトカムについても、より積極的に吟味してはどうだろうか?

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