演題情報

教育講演

開催回
第59回・2014年・神戸
 

血液透析領域におけるヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の最適診断法と治療を考える

演題番号 : EL-28

宮田 茂樹:1

1:国立循環器病研究センター 輸血管理室

 

未分画、低分子量を問わず抗凝固薬ヘパリン投与が、免疫学的機序により抗血小板第4因子(PF4)/ヘパリン抗体産生を促す。その一部(HIT抗体)が血小板等の活性化能を持ち、トロンビンの過剰産生を惹起し、逆に血栓塞栓症の発症を来す病態-ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)-の存在が明らかになり、病態解明に対する最近数年の進歩は目覚ましい。HIT抗体は、細菌感染に対する免疫的防御機構の誤誘導として産生されることが指摘され、ヘパリン投与回数にかかわらず二次免疫応答として抗体産生が起こる。よって、HITは、典型的には、ヘパリン投与患者で、PF4の放出が促されるイベントを契機に5日目以降14日目程度に発症する。一方、HIT抗体産生においては、特異的なmemory B cellによる強い反応を欠くことも指摘され、一過性にのみ存在し、ヘパリン中止後平均約3ヶ月で消失する。これらHITの免疫学的特異性を理解することは、HITの適切な診断、治療を検討する上で大変役立つ。一方、透析領域でのHITの特徴的な症状とされる回路内凝血やシャント血栓症は、HIT以外にも様々な原因でも起こり得るために、その診断に注意が必要である。加えて、2012年に保険収載された免疫測定法による抗PF4/ヘパリン抗体測定は、特異度が低く偽陽性が多いため、HITの過剰診断を招くことが、本邦のみならず海外も含め問題となっている。我々は、HIT診断に特異度が高い、洗浄血小板を用いてHIT抗体の血小板活性化能を定量する機能的測定法を開発した。透析領域で、一旦HITと診断されると、それ以降、少なくとも急性期はヘパリンが使用できず、長期間に渡り患者治療の変更を余儀なくされる。よって、臨床的診断とともに、血清学的診断法の長所、短所を正しく理解し、適切にHITを診断することが重要となる。強い血小板活性化能を持つHIT抗体保持患者では、回路内凝血やシャント血栓症のみならず、適切な治療を行わなければ、約50%の症例で動静脈血栓症を発症する。HITの治療には、少なくとも急性期には全身的な抗凝固療法が必要となる。本講演では、HITに関する最新の情報をもとに、現時点における最適診断法、治療法を検討してみたい。

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