演題情報

教育講演

開催回
第59回・2014年・神戸
 

透析患者に関する医療裁判事例を考える

演題番号 : EL-13

小島 崇宏:1

1:大阪A&M法律事務所

 

医療訴訟(民事)は、大学病院での患者取り違え事故や公立病院での注射器取り違え事故が生じた1999年頃より急激に増えはじめ、ピークである2004年には年間1110件の訴訟提起がなされた。その後、医療機関での医療安全対策が進んだことなどから、訴訟件数は減少傾向にあるものの、2012年においても年間793件の訴訟提起がなされている。また、刑事事件についても、1999年頃から増加傾向にあり、年間70から90件程度の立件送致がなされている。
透析に関しても、患者に精神疾患があることを理由に透析療法導入を断ったことが問題となったもの(福岡高裁宮崎支部平成9年9月19日判決)、維持透析治療を受けていた患者が心不全を原因とする肺水腫となった際に限外濾過方等による緊急除水を実施しなかったことが問題となったもの(東京地裁平成12年12月27日判決)などの民事裁判例や、静脈針脱落を看過したまま透析器の作動を再開させた准看護師が罰金刑に処せられた刑事裁判例(滝川簡裁平成18年1月13日略式判決)など、民事・刑事ともに裁判例が散見される。
透析に関する重篤な事故の報告件数(抜針事故94件、回路離断60件、除水ミス50件、空気混入39件、穿刺ミス29件:日本透析医会による血液透析関連事故の実態調査(平成12年))に比べると、民事の判例集等に登載されている裁判例の数は比較的少ない。これは、透析における重篤な事故の典型例の多くは、医療機関側に過失があることが明らかであり、訴訟外で解決しているケースが多いものと思われる。そして、その一部については、刑事責任も問われているものと思われる。
仮に、訴訟に至らなくとも、医事紛争に巻き込まれることは、医療従事者にとって多大な負担であるので、本講演を通じ透析に関するものを中心とした医事紛争の現状を把握することで、透析事故防止の対策を再考するきっかけとなることを期待する。

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