演題情報

教育講演

開催回
第59回・2014年・神戸
 

運動療法・リハビリテーションを考える

演題番号 : EL-09

上月 正博:1

1:東北大学大学院医学系研究科内部障害学分野

 

わが国は、平均寿命、高齢化率(65歳以上の人口の割合)、高齢化スピードの3点において世界一の超高齢社会である。高齢者は複数の障害を有することが多い。このような超高齢社会・重複障害時代では運動療法・リハビリテーション(リハ)に対するニーズが著しく高まっている。透析患者には高齢者が多い。透析患者では、心臓機能障害、視力障害、末梢神経障害、脳卒中や下肢切断の肢体不自由を合併するなど重複障害を呈する割合が高い。また、腎性貧血、MIA症候群、骨格筋減少・筋力低下、骨格筋機能異常、運動耐容能低下、易疲労、活動量減少、QOL低下などが認められる。 
腎臓リハは、腎疾患や透析医療に基づく身体的・精神的影響を軽減させ、症状を調整し、生命予後を改善し、心理社会的ならびに職業的な状況を改善することを目的として、運動療法、食事療法と水分管理、薬物療法、教育、精神・心理的サポートなどを行う、長期にわたる包括的なプログラムである。腎臓リハの中核をなす運動療法は、透析患者の運動耐容能改善、MIA症候群改善、蛋白質異化抑制、QOL改善などをもたらす。定期的な運動習慣のある透析患者は生命予後が良く、定期的な運動習慣をもつ透析患者の割合が多い施設ほど、施設当たりの患者死亡率が低い。透析患者の心血管疾患に対するK/DOQI臨床ガイドライン2005年版には、「医療関係者は透析患者の運動機能評価と運動の奨励を積極的に行う必要がある」と明記してある。週3回の透析中に運動療法を行う施設も増加してきた。透析以外の時間帯に改めて長い運動時間を設定しなくてよく、退屈な透析時間をどう過ごすか悩んでいる透析患者にとっては、非常な朗報である。
2011年に職種を超えた学術団体である日本腎臓リハ学会が設立され、2012年に初の腎臓リハの成書である「腎臓リハビリテーション」(医歯薬出版)が発刊された。本学会会員は日頃から重複障害を有しがちな透析患者の食事療法と水分管理、薬物療法、チーム医療などに既に習熟しているが、これらの経験に運動療法や社会・環境因子へのさらなる配慮を加えることで、透析患者が益することがさらに多くなるものと期待される。

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