演題情報

ベーシックセミナー

開催回
第59回・2014年・神戸
 

心疾患の早期発見のために-心電図、胸部レントゲン、バイオマーカー-

演題番号 : BS-06-1

田中 友里:1、常喜 信彦:1

1:東邦大学医療センター大橋病院 腎臓内科

 

透析診療では、その間隔には差があるものの定期的に胸部レントゲン、心電図、心臓バイオマーカー(心房性ナトリウム利尿ペプチド: ANP)を行う習慣がある。その多くが各々の患者にとって適正な体重を探るために用いられている傾向にある。一方、これらの検査は心疾患の病態変化を把握する重要な役割も担っている。 心臓は常に収縮と拡張を繰り返して全身血液を送り続けている。全身の器官、組織に必要な酸素やエネルギー源を供給しなければいけない以上、やむを得ない作業である。その宿命がゆえに、心臓は悪条件の中でも常に一定の役割を果たすために様々なことをやってのける。心臓が大きくなった、壁が厚くなった、もその一現象と考えてよい。つまり心臓は形を変える臓器である。たとえば、心臓のメインポンプの役割を果たしている左心室の圧が高くなったとき(高血圧の時)、あるいはいつも以上に多くの血液が流れ込んでくるとき(体重増加が多いとき)、どちらのストレスに対してもそれに対応して心拍出量を維持しようとしている。心筋梗塞のために左心室の壁の一部の動きが悪くなっても、あるいは心臓弁膜症で血液が逆流するようになっても、その不利な条件のもとでも代償機転が働き、全身に送り出す血液を維持している。この機転は短期的には大きな問題はないが長期化すればするほど、心臓の形を変えて代償するようになる。このことを心リモデリングとよび、心筋が線維化し末期心臓病へと至る不可逆的なプロセスの一段階と考えられている。いかに心リモデリングが起こらないように、心筋を線維化させないようにするかが、心臓死を予防するために大切になる。すなわち心臓は容易に形を変化させながら不利な条件を克服していくが、実は長期的には心臓の形の変化は悪いサインという事になる。 胸部レントゲン写真のCTRから心拡大を、心電図からは左室肥大を、そして心臓バイオマーカーからは心筋にどれだけ負荷がかかっているかを、すなわち心臓リモデリングを多くの角度から監視できるのがこの3つの検査である。体重の指標にとどまらず、刻一刻と変化する心臓の形をとらえる指標としても利用したい。

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