演題情報

よくわかるシリーズ

開催回
第56回・2011年・横浜
 

EPSの外科治療

演題番号 : YW-13-2

室谷 典義:1、堀 誠司:2、疋田 聡:1、鈴木 理之:2

1:千葉社会保険 透析、2:千葉社会保険病院 外科

 

被嚢性腹膜硬化症(Encapsulated Peritoneal Sclerosis: EPS)は長期CAPD療法の最も重篤な合併症である。その手術では慎重な癒着剥離操作を行い、腸切除・腸管吻合を避けることが大切である。手術手技:全身麻酔下に剣状突起下から恥骨上までの正中切開で開腹する。腹膜の肥厚が高度な症例では開腹そのものが困難なことがある。腹腔内の所見は個々の症例によりさまざまである。イレウスの責任病変の同定は癒着剥離を進め腸管の走行がわかるようになってはじめて可能となる。手術はひたすら腸管の剥離を慎重に行うことである。まず容易なところから剥離操作を開始する。EPS症例の多くは回腸末端付近の癒着が高度であるが、上部小腸は剥離しやすいことが多い。小腸の漿膜を損傷しないように剥離面を維持することが重要。また、腸管のみならず、小腸間膜の剥離も慎重に行う必要がある。不用意な操作で腸間膜の血管を損傷すると、術後に虚血による腸穿孔生じ、腸切除を余儀なくされる。通常の癒着性イレウスの手術では鈍的剥離操作が主体であるがEPS手術では鋭的剥離操作が主体。電気メスはほとんど使わず、クーパーを使用。長期透析患者の組織は脆弱であり無理な牽引は禁忌。ある程度剥離が進み、腸管の可動性が得られたら腸管の後面からのアプローチが有効。小腸の走行がほぼ認識できるようになると、回腸末端付近の癒着が最後に残っていることが多い。手術の目的はあくまでもイレウスの改善であり、局所的に癒着の強い所があっても、通過障害の原因でなければ無理して剥離せず放置する。再建を伴う消化管切除とバイパス術は原則的には禁忌。しかし癒着が強く剥離が困難で、かつこのままではイレウスの改善が見込まれないと判断されるときは、腸切除かバイパス手術の可能性を考慮することも必要。われわれの経験ではどうしても剥離できない癒着があり、前後の腸管の血流と色調が良好な症例では腸切除かバイパス手術を選択することになる。縫合不全の危険性が高いと判断される症例では人工肛門を造設する。おわりに:EPSの手術においては、慎重な剥離操作を行い腸管や腸間膜を損傷しないことが最大のポイントである。

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