演題情報

よくわかるシリーズ

開催回
第56回・2011年・横浜
 

開始・中止基準

演題番号 : YW-13-1

篠崎 倫哉:1

1:平成紫川会 社会保険 小倉記念病院 腎臓内科

 

2009年に日本透析医学会から腹膜透析ガイドラインが発表された。我が国独自のエビデンスに乏しい中でのガイドライン策定は困難な作業であったと思われるが、実際の臨床現場に参考となる事項が盛り込まれている。中止・開始基準についても言及されており是非参考にされたい。腹膜透析(PD)を合併症なくスムーズに開始するためには計画的導入が重要である。本邦では段階的PD導入法(SMAP法)が普及しており、導入時期をクレアチニンの逆数のグラフから予測し、あらかじめカテーテル挿入と埋没を行い、適切な時期に導入を行う方法で、入院期間も短縮でき有用である。開始時期については推定GFR 15ml/min未満の患者で治療抵抗性の腎不全症候が出現した場合、導入を考慮する。これは欧米においてCKDステージ5(GFR 15ml/min未満)を導入基準としているのに準じた策定である。また、PDにおいて残存腎機能が患者予後に与える影響が大きいことから晩期まで導入を待機するのは適切ではなく、GFR 6ml/min未満の場合は導入が推奨されている。現在までは1991年に厚生科学研究腎不全医療研究事業により策定された基準が広く普及していたが、この基準は血液透析(HD)導入を想定したものでありPDでの検証は行われていない。一方、中止基準についてはPD長期施行の一番の問題点である被嚢性腹膜硬化症回避のための中止条件としてガイドラインに述べられている。治療期間の延長とともにリスクが増えることは明らかにされているが、治療期間を限定してもEPS発症を完全に回避することは困難である。また近年ブドウ糖分解物が減じられた中性化透析液が使用されるようになり、EPS発症までの期間延長が期待されているがその効果は実証されていない。その為、現時点で中止時期を治療期間で決定することは困難である。ガイドラインではPETを中心とした検査を定期的に行い、腹膜劣化の進行が疑われる場合中止を検討するとしている。実際の臨床では患者自身がPD療法に固執することでHDへの移行が困難なケースも多く、このような症例にもPD/HD併用療法を行う施設もあるが、このときPDの中止時期を明確に設定しておくことが肝要である。

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