演題情報

よくわかるシリーズ

開催回
第56回・2011年・横浜
 

インフルエンザ

演題番号 : YW-4-1

森兼 啓太:1

1:山形大学医学部附属病院 検査部

 

インフルエンザは主に冬に流行するウイルス性感染症である。1~2日の潜伏期を経て、急な発熱や高熱、咳、くしゃみなどを主徴とする。大多数の人は対症療法のみで軽快するが、基礎疾患保有者・高齢者などでは重症化して肺炎や脳症などを起こし、予後不良な場合がある。診断は鼻腔ぬぐい液による免疫クロマトグラフィー法を用いた迅速診断キットを用いるのが一般的である。しかし、排泄されるウイルス量の少ない病状の初期段階で偽陰性となる傾向にある。 原因病原体はウイルスで、A型・B型の2種類がある。A型はさらに亜型(H1N1など)に分けられる。抗ウイルス作用を持つ薬剤として、オセルタミビル(商品名タミフル)とザナミビル(同リレンザ)に加えて昨年よりペラミビル(同ラピアクタ)とラニナビル(同イナビル)が加わった。カプセル・吸入・注射薬とその剤型は多様であり、患者の状態にあった投与経路・方法を選択することが可能である。いずれの薬剤も作用機序はウイルスの増殖抑制であり、ウイルス量が増加してしまった後に抗ウイルス薬を投与しても効果は薄い。 透析患者は一般に免疫抑制状態にあると考えられること、様々な基礎疾患を併存している人も少なくないので、重症化のリスクが高い。また、透析環境で定期的かつ長時間治療を受けるため、患者同士でうつしあう機会も少なくない。市中でインフルエンザが流行している際に、透析患者がインフルエンザ様症状を呈した際は、迅速診断キットの結果によらず抗ウイルス薬による治療を開始してもよい。 伝播経路はくしゃみなどの飛沫による感染が主体と考えられるが、飛沫が付着した場所に接触してその後に鼻や口に触るなど接触感染的要素や、結核のような空気感染的要素も否定できていない。感染者はサージカルマスクを着用して他人に伝播させないようにし、非感染者は手指衛生により感染を予防する。そして何より大切なのは、流行季節を前にしたワクチン接種である。ワクチンの発症予防効果は30~50%であり、ワクチンを接種した場合でも罹患することは当然ある。しかし、ワクチン接種で罹患確率を下げ、さらに罹患した場合に早期診断・早期治療をすることにより、透析患者をインフルエンザによる重篤な合併症から守ることができる。

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