演題情報

シンポジウム

開催回
第56回・2011年・横浜
 

腹膜透析(PD)中止基準、その現況と課題

演題番号 : SY-14-6

笠井 健司:1

1:富士市立中央病院 腎臓内科

 

2009年版 日本透析医学会「腹膜透析ガイドライン」(JSDTガイドライン)の際立った特徴は、「第五章 被嚢性腹膜硬化症(EPS)回避のための中止基準」を設けたことにある。その骨子として(1)長期PD継続あるいは腹膜炎罹患により腹膜劣化が疑われる場合PD中止を検討すること、(2)基本的な検査として腹膜平衡試験(PET)を推奨することが挙げられている。 EPSは一般に腹膜透析施行期間の延長とともに発症頻度が増加するだけでなく、発症した際の死亡率が増加し、回復率が低下することが報告されており、PD継続による腹膜劣化の進行が発症・進展の素地になっていることが明らかである。また、細菌性腹膜炎が関与する症例、長期PDの中止後に発症する症例があり、腹膜劣化に更なる変化(刺激)が加わった時にEPSに向かう病態が起動することが想定される(two hit theory)。 このようなEPS発症機序をふまえて、PD継続期間を限定することによってEPS発症を回避することが可能であると考えられる。その妥当な期間としてKawanishiらの成績からは8年未満、ISDTガイドラインでは3-5年未満、Yamamotoらの中皮細胞診断レジストリーでは6.5年未満が想定されている。ただし、これらはいずれも高GDP透析液使用下での成績を基にしており、導入当初から中性あるいは低GDP透析液を使用している症例におけるEPS発症に関しては十分な検討がなされていない。 わが国では導入初期から低GDP透析液のみが処方されていたPD患者の前向き観察研究が開始されている(Neutral solution and Extraneal for present PD outcome in Japan: NEXT-PD)。これまでに1266例の登録が終了し、現在データが集積されつつある。本セッションではその中間成績を提示すると同時に、JSDTガイドライン発表後に報告された臨床研究の成果を踏まえて、EPS回避のための中止基準見直しにあたっての課題を提示する。

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