演題情報

シンポジウム

開催回
第56回・2011年・横浜
 

PDの管理:透析量と尿毒症管理

演題番号 : SY-14-2

杉山 斉:1

1:岡山大学 慢性腎臓病対策 腎不全治療学

 

腹膜透析ガイドライン2009では腹膜透析療法の支柱となる重要項目の管理指針が明確にされ、わが国のPD治療の標準化への一歩が踏み出された。ここではPDの持つ利点を最大限に引き出し、医学的不利益を最小とする治療体系の構築が目指されている。  この中で「適正透析」の項では、その定義と適正透析量、適切な体液状態の維持、透析不足の臨床症候とそれによる治療法の変更について言及されている。「適正透析」は「溶質」と「水分」の除去が「適切」である状態と定義される。しかし多くの腎不全症候の改善は溶質と水分の除去のみでは達成されないのも事実である。  「適正透析量」は週当たりの尿素Kt/Vで評価し、腹膜透析と残存腎機能のそれぞれのKt/Vの総和を指標とし最低値1.7を維持する。しかし適正透析量Kt/V=1.7の根拠とされたのはメキシコのADMEX 研究およびHongKong studyの大規模研究結果であり、わが国のエビデンスではない。本邦ではKumanoらが2000年に多施設調査の結果、総Kt/V平均は1.8、PD Kt/Vは1.65と報告し、72%の患者が適正透析と判断され、71%で栄養状態が良好と評価されていた。またCANUSA studyの結果より残存腎機能(尿量)保持の生命予後改善に対する重要性が確認されている。すなわち残腎機能低下例では小分子だけでなく、中~大分子領域の尿毒素が蓄積するため、残存腎機能には腹膜透析への透析量上乗せ以上の意義がある。腹膜と残腎Kt/Vが同じ値であっても尿毒症管理に及ぼす影響は等価ではないと考えられる。  尿毒症管理が不十分な場合、特に、食思不振、栄養状態の悪化、EPO抵抗性貧血、薬剤抵抗性高血圧、体液量過剰、レストレスレッグなどの持続例では他の療法への変更が考慮される。  本項では自験例、合同レジストリーにおけるデータや過去の報告を含め、日常診療における適正透析量の遵守率や、適正透析量を満たす症例とそうでない例の臨床症候の差違について解析した結果を発表する。さらに今後は、ガイドラインを基準にした前向き観察研究により、適正透析量と尿毒症管理、合併症の差違、離脱、生命予後の違いについて明らかにし、本邦の臨床的エビデンスを蓄積していくことが必要である。

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