演題情報

シンポジウム

開催回
第56回・2011年・横浜
 

末期腎不全患者の細菌感染症~腎不全は細菌感染のリスクとなるのか?~

演題番号 : SY-12-1

佐藤 貴彦:1、井上 勉:1、鈴木 洋通:1

1:埼玉医科大学医学部 腎臓内科

 

日本透析医学会の2009年末の報告によると、透析患者の死因は心不全(23.9%)、感染症(20.8%)、悪性腫瘍(9.4%)、脳血管疾患(8.4%)の順であり、感染症は1993年頃から増加傾向にある。一般に腎機能障害が進行すると、細胞性免疫能の低下、貧血、低栄養、代謝性アシドーシス、皮膚・粘膜関門の障害などにより易感染性になり、加えて抗生物質の投与にも幾多の制限が加わり、治療が容易ではない。United States Renal Data System 2007年版では、chronic kidney disease (CKD)患者は非CKD患者に比べ、肺炎、菌血症・敗血症での入院が多いと報告され、感染症は心血管疾患と同様、あるいはそれ以上にCKDでは極めて重要な問題である。それにもかかわらず腎機能の低下が、感染症罹患のリスクファクターとなるのか否かを検討した報告は驚くべきことにほとんど見当たらない。以前CKD stageの進行に伴い、帯状疱疹の発症リスクが上昇することを明らかにし、透析に至らずともCKD stage 3から臨床上有意な細胞性免疫の低下がある可能性を報告した(Takahiko Sato et al.NDT Plus. 2009; 2: 263)。 今回の報告は、腎機能の低下が肺炎や尿路感染症などの細菌感染症の罹患に影響するかを検討した。2005年1月1日から同年12月31日の期間に当科を受診し、その後3年以上の継続的な経過観察が可能で、かつ腎代替療法導入以前の全症例を対象に調査を行った。結果はCKD stage 3以上はオッズ比2.53で有意に感染症罹患に影響する項目であり、免疫抑制剤の有無2.52をわずかに上回った。さらに感染症の罹患そのものは急性腎障害のリスクになるものの、CKDの進行速度には影響はしない事も明らかとなった。CKD stage 3以上の腎機能低下は、細胞性免疫能の低下やその他の免疫異常を伴い、感染症の罹患リスクを有意に上昇させる。透析医療においては更に腎機能の低下した患者群が対象であり、その特性を充分に念頭に置いた対応が必要であるとの結論を得た。腎機能と免疫・感染症に関する国内外の文献を参考に、透析患者における易感染性に関して最新の知見についても言及したい。

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