演題情報

シンポジウム

開催回
第56回・2011年・横浜
 

透析患者における骨折と骨質

演題番号 : SY-10-8

斎藤 充:1、丸毛 啓史:1

1:東京慈恵会医科大学 整形外科

 

骨強度に影響を及ぼす骨質を規定する因子として骨コラーゲンの量的・質的変化の重要性が明らかにされている.特に隣り合うコラーゲンの分子同士をつなぎ止める化学構造体であるコラーゲン架橋の異常は,それ単独でも骨強度を低下させる.コラーゲン架橋は,骨芽細胞が産生する酵素の作用を介して秩序だって形成される酵素依存性架橋[Saito M, JBMR 2003, Bone 2004]と,酸化や糖化により誘導されるAdvanced glycation end products (AGEs)の架橋体である非生理的架橋に分類される[Anal Biochem 1997].これまでの研究から,生理的架橋は骨強度にプラスに作用する善玉架橋であるのに対し,AGEs架橋はコラーゲンからしなやかさを失わせ,硬くて脆い状態にすることから悪玉架橋である[Osteop Int (7)(10) 2006, (REVIEW)2010].コラーゲンの架橋異常は,酸化ストレス,カルボニルストレス,糖化の亢進で惹起され骨折リスクを高める.慢性腎臓病(CKD)では,腎機能の低下に伴う酸化ストレスの増大や,血中ホモシステイン濃度の上昇,ビタミンDの活性化障害が生じるが,これらの因子は骨コラーゲンの架橋形成に悪影響をもたらす要因となることが明らかとなってきた.こうした骨質の異常は,骨の代謝回転の増減とは独立した機序でもたらされる.骨質の異常を非侵襲的に評価するサロゲートマーカーとして,血中ホモシステイン値,血中もしくは尿中の終末糖化産物(Advanced glycation end products; AGEs:ペントシジン)の有用性が明らかとなり,密度測定では評価しきれない骨折リスクを予測することが可能となってきた.さらに,PTHの状態もコラーゲンからみた骨質に対して影響を及ぼすことも明らかになってきた,骨質劣化を伴う症例では,単に骨密度を増加させただけでは骨折リスクは軽減できない.透析例のみならず,高齢者には数多く存在するCKD Stage 3以上のCKDをコモンディジーズとしてとらえ,骨質関連マーカーと骨密度を同時に評価し,個々の症例にあったテーラーメード治療を行う必要性がある.

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