演題情報

シンポジウム

開催回
第56回・2011年・横浜
 

AKIに対するCRRTの効果と限界:臨床研究デザインからの考察

演題番号 : SY-1-4

土井 研人:1、野入 英世:1、藤田 敏郎:1

1:東京大学医学部附属病院 血液浄化療法部

 

Acute kidney injury(AKI)とは、ICUにて展開される集中治療において敗血症あるいは多臓器不全に伴って発症する急性腎障害を意識した概念であり、急性腎不全(ARF)としてこれまで認識されていた、障害臓器が腎臓に比較的限局している病態とは異なる。近年、AKI対する治療量を検証する二つの多施設ランダム化比較試験(RCT)がNEJM誌に報告された(VA/NIH ATN study、RENAL study)。これらの臨床研究は、それぞれ米国、オーストラリア・ニュージーランドでの実地臨床おける通常の治療量をAKI症例に処方したlower intensity group(週3回間欠透析(IHD)あるいはCHDF濾過量20-25ml/kg/hr)と、さらに治療量を増したhigher intensity group(週6 回IHDあるいはCHDF濾過量35-40ml/kg/hr)における生命予後を比較したが、治療量を増加させても予後の改善にはつながらなかったという結果が得られた。二つのRCTの結果に基づいて形成されつつあるコンセンサスは、lower intensity groupにおける治療量はAKIに対して必要十分であるが、現在行われている治療量を減じればAKIの予後が悪化しうる心配がある、というものである。一方、循環・呼吸不全を合併するICU発症AKIに対して、CRRTが第一選択として用いられることが多いが、高いエビデンスレベルをもってCRRTがIHDよりも有用であることを証明した臨床研究は実は存在しない。エビデンスに担保されていないにもかかわらず、実際の臨床においては全身状態の不安定な症例にはCRRTを選択し、現行の治療量をあえて減じるといった処方はしないことが国際的にもコンセンサスとなっていく状況には、いわゆる“質の高い”臨床研究のデザインにおける問題点が影響しているものと思われる。AKIに対するCRRTの効果は間違いなく存在するが、最適な治療方法を証明する方法論に限界がある可能性について考察するとともに、今後のAKIに対するCRRT臨床研究の方向性を議論する。

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