演題情報

教育講演

開催回
第56回・2011年・横浜
 

腎不全患者における鉄代謝

演題番号 : EL-13

友杉 直久:1

1:金沢医科大学病院 腎臓内科

 

腎性貧血は、鉄の回転・利用効率に視点を置くと理解しやすい。鉄代謝の特徴は、積極的な鉄排泄系を持たずに閉鎖系で鉄を再利用し、血清鉄濃度を一定に保つことである。血清鉄は3-4mgときわめて少ない状態で維持されているが、造血に際して時間あたり0.8-1.0mgの血清鉄がトランスフェリン受容体1(TfR1)を介して赤芽球に取り込まれ、ヘモグロビンの新規合成にともない成熟赤血球内に確保される 。このまま放置されれば血中の鉄は4-5時間で枯渇してしまうことになるため、血清鉄濃度を維持するには速やかに貯蔵鉄から血清中へ鉄を供給する必要がある。生理的状態では、この主たる鉄供給源は網内系マクロファージである。赤血球は寿命100-120日で老化赤血球として網内系マクロファージに貪食され、ヘモグロビン中の鉄はマクロファージ内に移動し貯蔵される。この貯蔵鉄は、鉄輸送膜蛋白フェロポルチンを介して時間あたり0.8-1.0mgが血中に供給され、再度造血に利用される。不足分は、経口摂取鉄を吸収した腸管上皮細胞や、余剰鉄を貯蔵した肝細胞からフェロポルチンを介して供給されている。 フェロポルチンは、体内での唯一の鉄輸送膜蛋白であると同時にヘプシジン-25の受容体であり、その機能はヘプシジン-25の濃度に依存している。フェロポルチンはヘプシジン-25と結合し、共に細胞内部に移行されライソゾームで共に分解される。フェロポルチンが膜輸送蛋白として新規に合成されるためには2-3日間を要するため、その間はフェロポルチンの膜分布密度が低下し細胞から鉄を輸送することができない。つまり、フェロポルチンの膜分布密度は血清ヘプシジン-25の発現量で調節され、その結果鉄の供給量が制御されているのである。 この一連の反応は、ヘプシジン-25の産生が一旦亢進すると、しばらくは鉄を利用できない状態に陥ることを意味している。つまり、臨床的にはヘプシジン-25の産生を刺激する状態は極力避けなければならないのである。

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