演題情報

教育講演

開催回
第56回・2011年・横浜
 

生体適合性

演題番号 : EL-10

宇田 晋:1

1:関東労災病院 腎臓内科

 

血液透析の臨床応用は1940年代に急性腎障害に対して成功を収めたが,その後の透析技術の進歩により1960年代に至りその適応は慢性腎不全にまで拡大した.以後,血漿交換,血液吸着など多数の治療法が派生し,また腎代替療法の一つの選択肢としての腹膜透析療法を加え,血液浄化療法と総称されるに至った.血液浄化療法は血液中の有害物質や病因関連物質を血液から直接除去し,欠乏物質を血液に直接置換・補充する治療法であり,主たる治療効果は物質の除去能に依存する.一方,治療には腹膜透析を除き体外循環が必要で,血液と治療素材との接触や,治療に必要な薬剤の暴露などの必然性がある.つまり治療には血液と人工物(異物=非自己)との接触が不可欠で,これも治療効果や安全性の規定因子となることが明らかとなった. 「自己」が「非自己」に接した時そこには非自己を排除するためのシステム,つまり免疫反応が惹起され,その一部は「炎症」という形で体内において具現化される. 「生体適合性」とは「人工物と生体との接触において,より生体に対して悪影響を及ぼさないこと」とされる.1977年にCraddockらは血液透析施行後早期に再生セルロース膜と血液との接触によって補体が活性化され,肺へ白血球が集簇した結果,末梢血中の白血球数が減少する機序を明らかにした.透析分野においてはこれが嚆矢となったが,「生体適合性」という概念はその後透析分野以外においても大きな注目を集めるようになった. 血液透析療法においてはその黎明期より同療法開始直後にショック様症状発現などの急性反応が起こることが知られていたが,これはとりもなおさず生体適合性の低い透析膜使用が原因であることが明らかにされた.さらに長期間にわたる血液透析療法の結果発症する透析アミロードーシスやMIA症候群などの透析合併症にも,異物との接触や透析液からの汚染物質流入に起因した繰り返される慢性的炎症が関与すると考えられる.生体適合性の規定因子は透析膜と血液の接触という異物反応や透析液汚染にとどまらず,最近では体外循環を要さない腹膜透析領域へも生体適合性の概念が拡大している. 本講演では歴史的背景を踏まえ,主に血液浄化療法における「生体適合性」について概説したい.

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