発表

一般研究発表(ポスター)
2EV-051

精神科外来患者における抑うつ症状と前頭前野活動の関連(3) —近赤外分光法(NIRS)を用いた予備的研究—

[責任発表者] 岩山 孝幸:1
[連名発表者] 松永 美希:1
1:立教大学

目 的
 近年,近赤外分光法(NIRS)の臨床的応用に期待が高まっている。2014年4月に「抑うつ症状の鑑別診断の補助に使用するもの」として保険適用も受けるなど,精神科領域における脳機能測定法としての有用性が確認されつつある。これまでのNIRS研究は臨床群と健常群の横断的比較研究が多く,縦断的研究は富岡ら(2013)の研究があるもののまだ少ない。よって本研究では,縦断的なデータを収集することで,抑うつ症状の経時的変化とNIRSデータの関連を明らかにすることを目的とした。
方 法
調査参加者 2012年4月〜2015年1月の期間で,関東圏A精神科クリニックにおいて,臨床歴20年以上の精神科医1名の診断によりうつ病またはうつ状態とされ,研究協力の同意が得られた者を対象に調査を行った。尚,本研究は立教大学現代心理学部倫理委員会,及びライフサイエンス委員会の承認を得ている。
症状測定 抑うつ症状測定にはDSM-4-TRの大うつ病性障害の診断基準と合致するQIDS-J(簡易抑うつ症状尺度)を用いた。
測定装置 Spectratech社のOEG-16を用いて前頭前野機能を測定した。計測部位は国際10-20法に基づき,下端がT3-Fpz-T4ラインに一致するように設置した(図1)。
実施課題 先行研究と同様に,「あいうえお30秒・言語流暢性課題60秒・あいうえお70秒」を実施し,課題中の[oxy-Hb]の平均賦活量を賦活指標とした。課題は全てモニターにて呈示した。
測定間隔 1回目のNIRS測定後平均63,19日(SD =11.43)の間隔を開けて,2回目のNIRS測定を行った。症状測定も1回目と2回目で行った。
分析対象者 2回分の測定が行えた調査参加者の内,身体・神経疾患が確認された者,あるいは躁的エピソードが確認された者,1,2回目いずれかでQIDS-J得点が5点以下(正常範囲内)となった者,を除外し最終的に21名(男性15名,女性6名)を分析対象とした。平均年齢は38.67歳(SD =12.37, 範囲18〜60)で,罹病期間は平均66.81ヶ月(SD =60.84, 範囲1〜174),すべて右利きであった。分析にはSPSS Statistics19を用い,Pre10秒・Recovery50秒,Post5秒でベースライン補正を行った後,測定した[oxy-Hb]の脳血流変化から,高速フーリエ変換を用いたローパスフィルター(0.05Hz)を用いて微細な体動の影響を取り除いた。尚,分析の際にはMakizako et al.(2013)を参考に ch1-4を右側部・ch13-16を左側部と,さらにch7-10を中央部として関心領域に設定した(図1)。
結 果
 言語流暢性課題の平均語産出数は1回目で15.90語(SD =3.82,範囲11〜23),2回目で14.43語(SD =3.94,範囲8〜22)であった。年齢及び罹病期間と1,2回目の合計平均語産出数には関連は見られなかった(r=.35, p =.16; r=.32, p =.16)。罹病期間と各関連領域の1,2回目の合計平均賦活量には関連は見られなかった(左:r=-.02, p =.94,中央:r=-.16, p =.48,右:r=.24, p =.29)。年齢と左側部及び中央部の1,2回目の合計平均賦活量には関連は見られなかったが(左:r=-.01, p =.96,中央:r=-.07, p =.75),右側部とは有意傾向ではあるが正の関連が見られた(r=.40, p =.07)。
 QIDS-J得点の1回目と2回目の平均得点を比較したところ,有意差は見られなかった(t = 1.35, p .=19)。抑うつの経時的変化を検討するため,QIDS-J得点の2回目の得点から1回目の得点を引いた得点を「抑うつ変化量」とし,各関心領域の1回目の平均値賦活量との関連を調べた。その結果,左側部及び中央部においては関連が見られなかったが(左:r=-.17, p =.46,中央:r=-.33, p =.14),右側部において有意な負の関連が見られた(右:r=-.65, p =.00)(図2)。
考 察
 各関心領域で抑うつ得点の変化量と1回目の平均賦活量の関連を検討した。結果,右側部においてのみ1回目において平均賦活量が高いほどQIDS-J得点の減少が大きく,抑うつ症状が低減していることが示唆された。富岡ら(2013)は,一定期間の内に寛解に至った群とそうでない群を比較すると寛解群の方がより1回目の右側部の平均賦活量が高く,一方で1回目のNIRS測定後に薬物療法を開始し治療反応が見られた群は1回目の左側部の平均賦活量が高かったことを明らかとしている。本研究は観察研究であったため,右側部の予後予測性のみが同様に示唆されたものと考えられる。今後は交絡因子の影響や対象者の選別にも留意しつつより詳細な研究を行うことが求められる。
引用文献
富岡大・川崎真護・岩波明・野田隆政・兼子幸一・朴盛弘・三村將・中込和幸. (2013). うつ病患者の NIRS による治療反応性と疾患鑑別への有用性—多施設における 2 時点検査の結果と診断変更症例の検討—. MEDIX, 58, 4-9.
Makizako et al.(2013). Relationship between going outdoors daily and activation of the prefrontal cortex during verbal fluency tasks (VFTs) among older adults: A near-infrared spectroscopy study. Archives of Gerontology and Geriatrics, 56(1), 118-123.

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