発表

一般研究発表(ポスター)
2PM-071

BGMが作業記憶と譜読み行動に与える影響

[責任発表者] 椎木 紗彩:1
[連名発表者] 二木 郁#:1, [連名発表者] 小田 浩一:1
1:東京女子大学

目 的
 音楽を聴きながら作業をすると捗るという人と、気が散って集中出来ないという人がいる。では、音楽聴取時に行う課題の種類によって、その影響に違いはあるのだろうか。
 音楽に関係する課題を、音楽聴取時に行うと、二つの情報がお互いに干渉し合うために妨害効果が働くと考えられる。また、管•後藤(2008)によると、音楽の有無は記憶課題に影響を及ぼさなかったが、作業記憶を測る課題はなされていない。そこで、本研究では、音楽聴取時に音楽に関係する作業をすると妨害効果は働くのか、音楽聴取時に作業記憶課題を行うとどのような影響を及ぼすのか、の二つを明らかにすることを目的とした。
 BGMの条件については、阿部•新垣(2010)や吉野(2003)などは、BGMのテンポの影響については検討しているが、曲の好みについては検討していない。本研究では、テンポの統制をとった上で、曲の好き嫌いに焦点を当てるため、聴取する音楽は好きなBGMと嫌いなBGMの二つに分けた。

方 法
対象:実験協力に同意を得た東京女子大学の聴覚正常の学生30名、年齢18歳から22歳に実験を行った。
刺激:実験で使用したBGMは、予備調査をしてBPM105〜125のクラシック8曲から、BGM1=好きな音楽としてヘンデル作曲「オラトリオ ソロモンHWV67」を、BGM2=嫌いな音楽としてバルトーク作曲「弦楽四重奏第2番 BB75-第2楽章」を選び使用した。実験中に聴取させたBGMが終わったら、繰り返し同じ曲を流した。
また、譜読み課題ではベートーベン作曲のソナチネ第4番、第8番、第10番を用いて、ト音記号で書かれた右手部分の音名を書かせた。リーディングスパンテストでは、MNREAD-Jから30文字の文章70文を1セットとして3セット合計210文を使用した。
手続き:実験協力者30名を、BGMを聴く順番を変えた3つの群に分け、各群の被験者に譜読み課題とリーディングスパンテストをそれぞれBGM無し、BGM1、BGM2において1試行ずつ行った。また、各群内でも順序効果を相殺するために課題の順番をランダムにした。
 譜読み課題では、1条件につき4分間を1試行として、合計3試行を行い、1試行を終える毎に1分間の休憩を挟んだ。なお、初めに1分間の練習時間を設けた。リーディングスパンテストとは、まず、いくつかの文を口に出して読んでもらい、それぞれの文には、文中に一カ所だけ下線が引いてあるので、読みながらその単語を憶えてもらう、というものである(苧坂・苧坂1994)。リーディングスパンテストでは、各文条件5試行中3試行以上正解した場合にのみ、次の文条件に進めた。文条件は2文条件から最大5文条件まであった。
装置:Apple社のiPod第3世代でBGMを流し、それに付随されていたカナル型イヤフォンを使用した。音量は、全体のおよそ45%とした。
結 果
(1)譜読み課題
 総回答数と正答率をBGM条件ごとに求めた。BGMと総回答数について、被験者内要因をBGM条件とした一要因分散分析を行った結果、有意な主効果は認められなかった。また、BGMと正答率についても、被験者内要因をBGM条件とした一要因分散分析を行った結果、有意な主効果は認められなかった。
(2)リーディングスパンテスト
 リーディングスパンテストでは、苧阪・苧阪(1994)による得点化方法を用いて、スパン得点を求めた。BGMとスパン得点について、被験者内要因をBGM条件とした一要因分散分析を行った結果、有意な主効果は認められなかった。

考 察
(1)譜読み課題
 音楽に関係する課題として譜読み課題を行ったが、BGM条件による差はみられなかった。これより、音楽を聴いている時の脳の処理系統と譜読み課題を行う脳の処理系統が違うという可能性が考えられる。
 なお、本研究では、クラシックを用いての実験だったが、歌詞付きのBGMを聴取しながら音楽に関係する課題を行った場合にも研究の余地があると考える。何故なら、音楽聴取時の脳の処理系統と、譜読みなどの、音楽に関する作業をしている時の脳の活動領域が違うのならば、言語系統の分野に活動領域を持っている可能性があるからである。
(2)リーディングスパンテスト
 作業記憶課題として課したリーディングスパンテストであったが、BGMによる影響はみられなかった。よって、BGMは作業記憶に影響を及ぼさない可能性が示唆された。個人の作業記憶の容量はBGMの有無、好き嫌いによって簡単には増減しないと考えられる。
 BGMによる影響がみられなかった要因として、BGMを聴取していても、意識は作業の方に向いてしまった可能性も否定できない。BGMの音量がうるさくもなく、テンポも適度であったために、実験協力者がBGMに妨害されずに作業課題に注意を向けやすくなっていたかもしれない。

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